『ばけばけ』ヘブンが一世一代の決断下す 4週ぶり再登場の吉沢亮が放った凄まじい気迫

 「シッカリ、ケッコン、シマセンカ?」とトキ(髙石あかり)に改めてプロポーズしたヘブン(トミー・バストウ)。2人の子どもは、ヘブンの名前のレフ“カダ”と、勘右衛門(小日向文世)から一文字とって「勘太」と名付けられた。ヘブンは想像以上の子煩悩で、毎日家族に勘太のかわいいところを聞くほど。そんなふうに溺愛する勘太やトキと正式な家族になるため、NHK連続テレビ小説『ばけばけ』第111話では、ヘブンが一世一代の決断を下す。

 勘太が生まれてからしばらく経って、トキとヘブンは戸籍の相談をするために熊本市役所を訪れる。しかし、職員たちは互いに手続きを押し付け合うばかりで、まともに対応してくれない。それもそのはず。1873年(明治6年)に太政官布告による内外人婚姻規則の発令という、日本で最初の国際結婚に関する国籍法が制定されたものの、当時はまだほとんど事例がなかった。

 後日、いろいろと調べたであろう市役所の職員たちが松野家に説明をしにやってくる。結論として、家族3人が同じ戸籍に入ることはできる。ただし、「トキと勘太がヘブンの戸籍に入り、イギリス人として日本で暮らす」か、「ヘブンがトキと勘太の戸籍に入り、日本人になる(=帰化する)」かのどちらかを選ばなければならない。今でこそ国際結婚しても、原則として夫婦それぞれの国籍が変わることはないが、戦前の国籍法では家族全員が同一国籍でなければならないという決まりがあったのだ。前者にはトキや勘太がヘブンの遺産を受け取れない、後者にはヘブンが海外へ出るのが難しくなるというデメリットがあった。

 難しい選択を迫られたヘブンに、同僚のロバート(ジョー・トレメイン)が「自分の幸せについて真剣に考えるんだ」と忠告する。日本での暮らしに新鮮さを感じなくなり、創作に行き詰まったヘブン。簡単には海外に行けないとなれば、日本で何かしら書くものを見つけなければならないが、それも難しい状況だ。つまりヘブンにとって日本に帰化するということは、それすなわち、現時点では作家としての終わりを意味する。トキと勘太に自分の国籍に入ってもらい、最悪の場合は執筆の題材を求めて海外に渡る可能性を残していく選択肢もあった。幸いにもトキたち家族は、遺産はいらないから、ヘブンの暮らしやすさを優先してほしいと言ってくれている。

 それでも、ヘブンは今まで自分の幸せの大部分を占めていた“書く喜び”を捨ててまで、日本人になることを選んだ。ついては、次はフィリピンで滞在記を書かないかという誘いを断るべく、イライザ(シャーロット・ケイト・フォックス)に一筆を入れる。そこには、これからは家族の幸せ=自分の幸せとして生きていこうとするヘブンの覚悟が書かれていた。トキや勘太に遺産が残せれば、自分に万が一があったとしても、2人を守っていける。ヘブンの「ワタシ、ニホンジン、ナリマス」という言葉の重みを瞬時に受け取ったトキの、感極まった表情が印象的だった。

 そんなふうにトキがヘブンから大切に思ってもらえるのは当たり前ではないのかもしれない。当時、多くの外国人男性が求めていたのは生涯を共にするパートナーではなく、異国での生活をサポートしてくれるケア要員としての現地妻であり、日本での目的を達すれば、その役目も終わるーー。その是非や、ロバート自身のスタンスは定かでないが、少なくともラン(蓮佛美沙子)はそう思っているのだろう。幸せそうなトキとヘブンを前に、ずっと溜め込んでいたランの感情が爆発する。ヘブンの選択が、ロバートとラン夫妻の関係にさらなる一石を投じることは間違いない。

 さて、第23週では「ゴブサタ、ニシコオリサン。」という副題の通り、半ば喧嘩別れとなったヘブンと錦織(吉沢亮)が再会を果たす。第111話のラストでは、錦織が4週ぶりに再登場。第95話のラストと同様に喀血した錦織はティッシュで手を拭い、ゴミ箱に放り込む。ゴミ箱の中は血のついたティッシュでいっぱいだ。錦織の顔はすっかり痩せこけており、病が進行していることを物語っている。制作統括の橋爪國臣曰く、撮影がなかった1カ月の間に約13キロもの減量を行ったという吉沢は弱々しくも凄まじいほどの気迫を放っており、わずかな登場にもかかわらず、一瞬にして観る者の心をさらっていった。

■放送情報
2025年度後期 NHK連続テレビ小説『ばけばけ』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00~8:15放送/毎週月曜~金曜12:45~13:00再放送
NHK BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜8:15~9:30再放送
NHK BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:髙石あかり、トミー・バストウ、吉沢亮、岡部たかし、池脇千鶴、小日向文世、寛一郎、円井わん、さとうほなみ、佐野史郎、北川景子、シャーロット・ケイト・フォックス
作:ふじきみつ彦
音楽:牛尾憲輔
主題歌:ハンバート ハンバート「笑ったり転んだり」
制作統括:橋爪國臣
プロデューサー:田島彰洋、鈴木航、田中陽児、川野秀昭
演出:村橋直樹、泉並敬眞、松岡一史
写真提供=NHK

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