『リブート』鈴木亮平の芝居は想像の遥か上だった 黒岩勉&東仲Pに聞く“第1章”の舞台裏
第1話のTVer再生数が配信開始後8日間の歴代最高記録(※)を更新し、SNSで考察合戦を巻き起こしている日曜劇場『リブート』(TBS系)。3月1日放送の第6話では、儀堂歩(鈴木亮平)の死とともに第1章が完結し、物語が再起動された。東仲恵吾プロデューサーと脚本を手掛ける黒岩勉氏が、制作の舞台裏と作品に込めた思いを語った。
あまりにも想像を超えてきた鈴木亮平の演技
ここまでの反響について、東仲は「今作では、複雑な展開を盛り込むことで、何度も観たくなる楽しめるものを作りたいというプランは当初からありました。その点は狙い通りというとちょっと大げさなんですけど嬉しいです」と喜ぶ。「全ての台本を書き終わった状態でオンエアを迎えた」という黒岩氏。「実はほぼ初めての経験で、撮影も終わって、映像も最後まで観させていただいてる状態でした。誤解を恐れずに言うと、手応えはあったんです。現場の熱量も素晴らしかったし、役者さんたちも素晴らしいパフォーマンスを発揮していただいたことはわかっていたので、これで反響がないとすごく辛い。大失敗に終わったらどうしよう、この先何をやればいいんだろうというくらい怖さがありました。だから第1話とその後の反響がとてもありがたいですし、すごくホッとしたというのが正直なところです」と笑顔を見せた。
今作をけん引する鈴木亮平について、東仲は「鈴木さんじゃなければ演じ得ない世界線でしたし、一つひとつものすごく魂を削ってストイックに取り組んでいただいたというのが現場の印象」と語る。黒岩も「(鈴木)亮平さんと戸田恵梨香さんなら、こういう話でもちゃんと成立させていただけるだろうと。ともすればファンタジックになったり、コメディ的なギリギリのラインの設定ではあると思うんですけど、この2人だったら日曜劇場らしいドラマにしていただけると信じて書きました。結果は、こちらの想像を超える演技で返してくださって本当に驚きました」と感嘆した。
『TOKYO MER〜走る緊急救命室〜』(TBS系)などで鈴木と組んできた黒岩は「亮平さんとは何回かお仕事してすごい人だと思っていたんですけど、今回はそれ以上でした」と驚く。なかでも「第6話終盤で、亮平さん演じる早瀬が、儀堂の妻の麻友(黒木メイサ)と話しながらプリンのカラメルを口にするシーンで、何を見せられているかよくわからないけど、すごい泣けてきちゃうことがあって。悲しいのか嬉しいのかはっきりわからないところで感動しているところがすごくて、心が動かされる瞬間でした。あの時の亮平さんのお芝居って、もしかしたら一番上質な感動なのかもしれない」と感じたそう。「普通の人間ができないことを軽やかにやる姿は、フィギュアスケートで完全パーフェクト演技を見せられた奇跡のようなすごい感動があって、役者さんというのはこんなにすごい生き物なんだというのを今回改めて感じさせていただいたところがあります」と率直な思いを述べた。
ハヤセ洋菓子店は善の塊
主人公の早瀬陸はパティシエ。しかし、当初は区役所職員の設定だった。「亮平さんに決まったときにパティシエで行こうと決めた」と黒岩。「善良さが際立つ感じがあって。区役所職員だとすごいフラットでどんなキャラクターにもできる。パティシエになった瞬間にある程度(キャラクターが)見えるというか、甘いものが好きという時点で優しそうな人だなと」がその理由。「あとは亮平さんは『TOKYO MER』でもそうでしたけど、職人や技術職を演じるとめちゃめちゃ映えるという印象があったので、ケーキを作ったら上手なんだろうなとか。おんぶにだっこですね」と鈴木への信頼を口にした。
黒岩によると「ハヤセ洋菓子店は善の塊みたいなところ」とのこと。「スイーツは嫌なことを全部忘れられるイメージの象徴で、ダークな世界との対比で甘く優しい世界の食べ物を要所に入れています。合六(北村有起哉)が料理を振る舞うのは、食は生きる糧になるし、殺す合図にもなるという表裏一体の正義と悪の延長でとらえていただければ」と意図を明かした。東仲は「あのお店は本当にあるんですけど、すごく良い雰囲気なんですよね。家族でやられていて、すごく作品とマッチした印象があります。食は大事だと思うんですよ。合六の優しさであり、怖さでもあるかもしれないですけど、ただ単に残忍な人ではないという一面が出ていますよね」と解説した。
“ファンタジー”にはならないギリギリのリアリティ
視聴者の度肝を抜いたのが、第1話で主人公の早瀬(松山ケンイチ)が儀堂になり代わるリブートシーン。黒岩は「ギリギリのリアリティを追求して、その説得力がないとファンタジーになってしまうんですけど、本当に上手なんですよね。亮平さんはもっと大げさにわかりやすく、モノマネ的に演じることもできたと思いますが、儀堂になり代わって周囲の人間にバレないように、なおかつ視聴者には中に松山ケンイチさんがいると感じさせなきゃいけない、そのギリギリのところを突く感覚が、僕も現場で見たときに『これは大丈夫だな』と思いました。さすがだなと。亮平さんは本当に勉強家なので、松山さんのお芝居を全部拾ってきて、手の動きとか歩き方の所作から入るんですよ。本当に感謝です」と主演俳優を絶賛した。
また、第1話の演出について、黒岩は「顔を変えて誰かになりかわる話って、古今東西死ぬほどいっぱいあるんですけど、今回はこれだけ整形技術が上がってきたから、もしかしたらやれるんじゃないかと。リアル路線があるから今回やろうという企画だったんですけど、整形手術についてリサーチしていくうちに、ダウンタイムが必要とか、順番的に最後に耳にくるとか、声の変え方などが具体的にわかったのがすごく面白くて。普通は整形期間を飛ばして、次の瞬間、包帯を取って顔が変わりましたとやってきたのが、今回、リアリティを持たせるために、モンタージュシーンにして変わっていく段階を見せれば、今までにない新しいドラマになるんじゃないかと話しました。坪井敏雄監督は映像化するためにリサーチを重ねていて、筋力をつけるトレーニングも含めて、あの映像はどこまでがVFXかわからないくらい巧みで、素晴らしい説得力を生んでくれました」と絶賛した。
さらに、東仲は「一緒にプロデューサーを務めている国府さんが、整形外科医の先生にリサーチをしたのですが、鈴木さんと松山さんだったら、なりかわりはできるとおっしゃって。実は目標値があるほうが本当はやりやすいという報告をくれて、それを元にしながら、坪井監督もとことん突き詰めるのが好きな人なので、そこから黒岩さんにもフィードバックさせてもらい、モンタージュで行きましょうという話になりました。そういう意味で、第1話のシーンは監督の細かいこだわりが詰まっています。VFXも進化していて、たとえば第5話の儀堂と早瀬が絡むシーンの加減ってセンスが問われると思うんですよね。あそこの説得力はすごく大事で、VFXチームが見事にやってくれました。筋トレは鈴木亮平先生が専門家で、松山ケンイチさんがどうやったら“鈴木亮平”になれるかをよくご存じだったので、いろんな器具を持ってきていただいたそうです。投げている人形も亮平さんがこういう人形を使うといいよと言って、購入して使わせてもらいました」と舞台裏を明かした。
東仲は、鈴木と松山についても「お二人のお芝居が同じカットをずっと同じようにやっていて、二人が偏執的に突き詰める方なので、こうだよねとかやり取りしながら時間もすごくかかっているんですけど、そのお二人の熱量だったり、スタッフもすごい熱量で全員が取り組んでくださって、いろんなめぐり合わせで複合的にできたシーンです。今後もああいうものを作っていきたいです」と意気込みを示した。
数々の名作を世に送り出してきた黒岩だが、今作のような連続ドラマで苦労することはないのだろうか。「個人的な感覚で言うと、1話完結の事件とか病院ものを書くより楽です。ずっと話がつながっていたほうが、第1話で登場人物のキャラクターと思いを決めておけば、そこから先はありがちな言い方ですけど、彼らが話を決めていくんですよ。もちろんゴールは決めておくんですけど、勝手にキャラクターが動いていく世界になるのは僕的には楽なんです。どこで話を区切るかは技術論になるかもしれませんが。最後まで観てもらうことが一番大事なので、何が起きれば次も観ていただけるかは、毎話、全体構成を作るときに、最初にそこを決めて書いたりします」と創作術を明かした。