『ばけばけ』熊本編を彩る杉田雷麟の存在感 “静”の演技に秘めた役者としての“凄み”
連続テレビ小説 『ばけばけ』(NHK総合)は、吉沢亮演じる錦織友一の深い悲しみをたたえた表情とともに松江編を終えた。物語は熊本へと舞台を移し、キャストの布陣も新たな顔ぶれとなった。松江を去る場面で、「ヘブン先生を追いかけていく」と宣言していたのは、松江中学の生徒二人。その中の一人が、錦織の弟・丈である。丈は熊本で、トキやヘブンたちと同居することになるということだから、今後は登場シーンも増えていきそうだ。ここで、丈を演じている杉田雷麟のこれまでの歩みを振り返ってみたい。
杉田は、早熟な演技派俳優だ。14歳の時にオーディションで役者の世界に入り、2017年から芸能活動を始めると、翌年にはスペシャルドラマ『Aではない君と』(テレ東系)で殺人容疑者の少年役に抜擢される。この時、共演した佐藤浩市から初対面で「この世界で食っていくのか」と聞かれ、「はい」と即答したという逸話を持っている。
2019年には映画『半世界』で、稲垣吾郎の息子役を好演し、第41回ヨコハマ映画祭最優秀新人賞、第34回高崎映画祭最優秀新進男優賞を受賞している。思春期男子の荒ぶれた気持ちや寂しさと強がりの葛藤といった複雑な心情を、まるで芝居と感じさせないほどの自然体で演じている。派手な動きがなくても、目や佇まいだけで、その役の感情や心の動きまでを表すことができる、演技派の役者として存在感を示した。
その後も、『長いお別れ』(2019年)、『罪の声』(2020年)、『福田村事件』(2023年)などの話題作に出演。2025年に公開された映画『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』では主演を務めた。杉田は、幼い頃に山で弟を失くした過去を持ち、そのトラウマを抱えながら真実を追うという役どころ。派手なアクションではなく、常に恐怖と隣り合わせの張り詰めた空気の中で、画面から漂う静かな恐怖や、画面に映らないものへの恐怖を、持ち前の繊細な表情や醸し出す雰囲気で表現した。
杉田の活躍は映画だけではない。TBS日曜劇場『19番目のカルテ』(2025年)では、第2話にゲスト出演し、病気の弟の面倒を見続けたヤングケアラーの兄・岡崎拓を演じた。「お兄ちゃん」であることを自分に課し、両親にも頼りにされてしまう中で、愛していたはずの弟がいなくなったことに安堵を感じて葛藤するという役柄。自分の苦しみは誰にもいえないものとして胸にしまっている表情から、医師の徳重(松本潤)に号泣しながら気持ちを吐露するシーンは、涙なくしてはみられなかった。