『Missホンは潜入調査中』ガールズクラッシュの痛快作に 現在と地続きの女性たちの悔し涙
第4話、4人で夜遊びに行くエピソードで、話題は「落ちこんだ時こっそり泣く秘密の場所がある」という切ないガールズトークに。会社から遠いハンバーガーショップ、金庫、最終のバス、図書館の地下二階の女子トイレ……誰にも見せられない気持ちを隠しておく場所を、互いに打ち明けていくのだった。ジャンミもボクヒも秘密と思惑があるように、4人はベタベタするわけでもないが確実に繋がり合っている。そんな彼女たちの姿には胸が痛くなる。4人のような女性の悔し涙が、歴史の中にどれほど埋もれているのだろうか。
ジャンミたちとは違ったありようで時代を象徴するキャラクターが、ハンミン証券秘書室長のソン・ジュランだ。24時間カン会長の傍を守る影の実力者で、彼女が創業者兼会長カン・ピルボム(イ・ドクファ)に頼んで作ったのが、優秀な女性社員親睦のグループ「女友会」だった。会社から疎外感を与えられていた女性社員に向上心と帰属意識を持たせるための会だったが、いつしか裏金を会員の名義でプールするなど不正の温床となってしまっている。ジュランはたしかに女性の社会進出への足がかりを胸に抱いていたはずだが、いつしか志を見失い、ピルボムのような絶対的な権力と不正に取り込まれてしまったのかもしれない。
「ジャンミ」は主に1970年代から1980年代に人気があった名前であり、またピルボムが明かしているが「ハンミン証券」は韓国=大韓民国の「대한민국」(テハンミングク)から取られている。ホン・ジャンミは、韓国のかつて女性たちに与えられた典型的な名前を背負い、その時代の女性の苦難を引き受けながらも、現代の女性たちのように果敢に社会の不正と理不尽に切り込んでいく。凄腕エンジニアながら存在感のないイ・ヨンギ課長(チャン・ドハ)をなだめすかし、やる気にさせて上手く“使う”さまは、男性社員しか実務に当たれない状況を逆手に取る賢い方法だ。一般的な取引を装った会社ぐるみの不正を阻止したり、一介の女性社員と侮っていた周囲の男性、とりわけ中年管理職たちが、一瞬で危機を察知する才能に恐れを抱き始める姿が痛快だ。
すでに物語はついに、1997年12月3日の運命の日を迎える。当時、IMFの介入により金融機関のリストラと構造改革を受け入れたことで、証券会社を含む金融会社が多く倒産した。ジャンミの正体をグムボだと突き止めていたジョンウは「報われない正義感だけで生きていくのか?」と忠告する。二人が別れたのは、ハンミン証券への調査をめぐり、ジョンウが不正を見逃したせいだった。ジャンミは「今度も傍観すればいい」と突っぱねる。
脚本を担当したムン・ヒョンギョンは「過去を懐かしむ物語ではなく、前へ進んでいく物語を描きたかった」と、その執筆意図を語っている(※3)。近年、日本や韓国では2000年前後のカルチャーへ憧れる「レトロ文化ブーム」があった。だがジャンミは、懐古する言説に強烈なカウンターパンチを食らわせる。あなたの住む国の過去は、それほど良かったのか?と。
参照
※1. https://www.ipss.go.jp/syoushika/bunken/data/pdf/17259703.pdf
※2. https://www.neol.jp/movie-2/107105/
※3. https://kankoku-drama.com/news_topic/id=29780
■配信情報
『Missホンは潜入調査中』
Netflix配信中
出演:パク・シネ、コ・ギョンピョ、ハ・ユンギョン、チョ・ハンギョル、チェ・ジス、カン・チェヨン、イ・ドクファ
脚本:ムン・ヒョンギョン
(写真はtvN公式サイトより)