宇野維正の映画興行分析
「福田雄一の時代」に異変? 『新解釈・幕末伝』の不調を考える
1月第2週の動員ランキングは、『ズートピア2』が週末3日間で動員46万3000人、興収6億5400万円をあげて6週連続で1位。1月12日までの公開39日間の累計動員は907万8400人、累計興収は123億5200万円。2位以下も順位の入れ替わりはあったものの5位までのラインナップは前週と同じ。例年この時期は有力作の公開が少ないため動きの少ないランキングとなるが、今年も同様だ。
そんな中、12月19日に公開されて初週は3位、2週目は5位、3週目は7位、今回の動員ランキングではトップ10圏内ギリギリの9位と順位を落とし続けている『新解釈・幕末伝』の不調が目立つ。公開から25日間の累計興収は9億4900万円。『新解釈』シリーズの最新作となる同作は、これまでの作品同様、福田雄一が監督、脚本を手がけているほか、「福田組」と呼ばれるお馴染みの人気俳優が多く参加している。映画作品としてシリーズの前作にあたる大泉洋主演の『新解釈・三國志』は2020年12月に公開されて、最終興収40.3億円。2021年の年間興収ランキングで7位の大ヒットを記録した。ちなみに『新解釈・三國志』と『新解釈・幕末伝』のオープニング3日間の興収を比較すると、前者は7億7000万円、後者は2億4400万円。5年で3分の1以下となっていて、公開4週目までの推移を見ても同じく3分の1程度の最終興収となる見込みだ。
劇作家出身、テレビ界でも活躍してきた福田雄一が映画監督として一躍ヒットメイカーとなったのは、2017年に公開されて興収38.4億円を記録した『銀魂』だった。以降、コロナ禍を挟んで10年近くにわたって精力的に映画作品を発表し続けるだけでなく、テレビや配信プラットフォームでも作品を発表し続け、得意とするコメディ作品に限らず手がけてきた作品のジャンルも多様。『銀魂』以降も、必ずしもすべての作品がヒットしてきたわけではないが、実写作品であること自体に逆風が吹いてきた映画界で、「数撃てば当たる」の精神を体現してきた稀有な大衆作家と言える。
したがって、今回の『新解釈・幕末伝』の結果をことさらあげつらうつもりはないのだが、完全なスタンドアローン作品やチャレンジ性のある企画ではなく、人気シリーズでの急失速はどうしても気になるところ。2026年には、監督と脚本を務める『SAKAMOTO DAYS』、そして総監督と脚本でシリーズ初参加となる『新劇場版☆ケロロ軍曹 復活して速攻地球滅亡の危機であります!』の公開も控えている。もし今後も福田雄一の作品が当たらなくなれば「時代が変わった」ということになるが、多作家だけに、きっと新たな手は次々と打っていくのだろう。
■公開情報
『新解釈・幕末伝』
全国公開中
出演:ムロツヨシ、佐藤二朗、広瀬アリス、岩田剛典、矢本悠馬、松山ケンイチ、染谷将太、勝地涼、倉悠貴、山下美月、賀来賢人、小手伸也、高橋克実、市村正親、渡部篤郎、山田孝之
監督・脚本:福田雄一
主題歌:福山雅治「龍」(アミューズ/Polydor Records)
制作プロダクション:CREDEUS
製作:映画「新解釈・幕末伝」製作委員会
配給:東宝
©︎2025 映画「新解釈・幕末伝」製作委員会
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