髙石あかり、今田美桜、森七菜らがエンタメシーンに刻んだ名演 2025年に活躍した女優たち
ますます脂が乗り始めている山下リオ、夏帆、南沢奈央
演技者としてのキャリアを重ね、ますます脂が乗り始めているのを感じたのが、山下リオ、夏帆、南沢奈央だ。山下は映画『雪子 a.k.a.』で主演を務め、小学校の教師でありラッパーという特異な役どころを好演。夏帆はドラマ『じゃあ、あんたが作ってみろよ』(TBS系)で主演し、人生に迷える女性の心の揺らぎを体現した。そして、南沢は舞台『海と日傘』で主演。若くして余命3カ月と宣告された女性の“生”を儚くもチャーミングに演じ上げていた。それぞれの作品が、彼女たち一人ひとりの新たな代表作になっただろう。私は彼女らの同世代の人間として、どこか自分たちの代弁者のようだと感じたものだ。これからがさらに楽しみな3人である。
インディペンデント映画のシーンで輝いていたのは、やっぱり芋生悠だ。20代が中心のキャストやスタッフによって生み出された『ROPE』でキーパーソンを演じ、豊田利晃監督の待望の最新作『次元を超える TRANSCENDING DIMENSIONS』でも主要な役どころに。松田龍平、窪塚洋介、千原ジュニアといった、これまでの“豊田組”を支えてきたメンツの中に彼女が並んでいるのは、かなりグッときたものだ。一方、メジャー映画の領域で真価を発揮したのが小松菜奈。近年、彼女と劇場で会える機会は減ってきているわけだが、「大ヒット作」となった『8番出口』の1本だけでも十分に満たされたものだ。スクリーンに映し出される小松を見上げられることが、いったいどれだけ幸福なことなのか。再認識したのは私だけではないだろう。
彼女の存在も外せない。映画『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』で名シーンの誕生に貢献し、日本映画界の語り草になっていくであろう演技を残した、伊東蒼である。彼女が演じた“さっちゃん ”の一挙手一投足を思い出すにつけ、胸がつんと痛み、目が潤んでくる。もしあのシーンをあなたがまだ観ていないならば、すぐに配信などでどうにかすべきだ。映画史に新たな1ページが刻まれた、その証言者になるためにである。それから伊東はステージ上でも素晴らしかった。彼女が挑んだのは唐十郎の初期の名作『愛の乞食』であり、そのうえこれを関西弁で上演するという驚きのプロジェクト。ひとりの若き演技者として、そのポテンシャルは底が知れない。
最後のひとりだ。ここで麗の名を挙げたい。「チョーキューメイ」というバンドのボーカルである彼女の存在を、どれくらいの人が知っているだろうか。演技経験が豊富なわけではないから、彼女を「俳優」とするのはちょっと違うかもしれない。しかし、PFFアワード2023でグランプリを獲得した映画『Retake リテイク』で堂々と主演を務め、これがこの2025年に劇場公開。麗の音楽家としてのリズム感やセンスは、その演技にも表れているように思う。演じることに対してどれくらい意欲的なのかは分からないが、ライブハウスのステージ上だけでなく、スクリーンでも麗のパフォーマンスを観たいものである。
さて、こうして10名の女性俳優について記してみた。2025年の感謝の気持ちを込めて、ここで筆を置こうと思う。間違いない。ここに並んだ多くの者が、2026年をも席巻していくだろう。それぞれのスタイルで。