『ホーム・アローン』“バトル”はまさかの15分? 全編にあふれる“欲張らない”気持ちよさ
『ホーム・アローン』が全世界の親世代・子世代の双方に幅広く愛された理由は、マコーレー・カルキンの奇跡的な愛らしさと卓抜した演技力のみならず、製作・脚本を手がけたジョン・ヒューズの「自由でいたい子供心」と「心配性の親目線」の見事な合致にもあるだろう。監督のクリス・コロンバスも、脚本を手がけた『グレムリン』(1984年)や『グーニーズ』(1985年)、そして監督デビュー作『ベビーシッター・アドベンチャー』(1987年)などで、未成年への圧倒的共感と理解を示してきた。『ホーム・アローン』ではさらに主役の年齢設定を下げつつ、その演出スキルを最大限に発揮し、等身大の目線で「子どもの世界」の喜怒哀楽を見事に描き出している。
ジョン・ヒューズが監督も兼任していたら、きっとよりシニカルな内容になり、ここまで子どもたちへの親密さと共感度の高さに溢れた映画にはなっていなかっただろう。ということは、作品の世界的大ヒットも実現しなかったかもしれない。コロンバスにとっては、少年少女への演出をさらに進化・拡大させた後年の大ヒット作『ハリー・ポッターと賢者の石』(2001年)に繋がる布石としても、本作の意義は大きい。
そんな歴史的意義とは関係なく、いまも『ホーム・アローン』は「普通に」楽しいし面白い。ジョン・ヒューズにしても、クリス・コロンバスにしても、これを自身の最高傑作にしてやろうなどという気負いはまるでなかったに違いない(だからちょっと作りが粗いところも許そう)。『おじさんに気をつけろ!』(1989年)や『ジェイコブス・ラダー』(1990年)で世に出たばかりのマコーレー・カルキン少年も、芝居の楽しさに目覚めた新人俳優ならではの溌溂とした魅力に溢れている。ゆえに本作は「欲張らない」映画の気持ちよさが全編に感じられるし、だからこそ「映画の奇跡」や「ヒットの秘訣」を見つけやすい気がするのかもしれない。あまりに有名な人気作だからこそ、改めてじっくり見直してみるのも一興だ。
■放送情報
『ホーム・アローン』
日本テレビ系にて、12月19日(金)21:00〜23:04放送
※放送枠10分拡大
出演:マコーレー・カルキン(矢島晶子)、ジョー・ペシ(青野武)、ダニエル・スターン(江原正士)、ジョン・ハード(有本欽隆)、キャサリン・オハラ(鈴木弘子)、ロバーツ・ブロッサム(清川元夢)、アンジェラ・ゴーサルズ(神代知衣)、デヴィン・ラトレイ(高木渉)、ゲリー・バンマン(富田耕生)、ヒラリー・ウルフ(ならはしみき)、ジョン・キャンディ(屋良有作)、マイケル・C・マロンナ(伊倉一恵)、テリー・スネル(片岡富枝)
監督:クリス・コロンバス
脚本:ジョン・ヒューズ
製作:ジョン・ヒューズ
撮影:ジュリオ・マカット
音楽:ジョン・ウィリアムズ
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