生田斗真が作品にもたらす“刺激” 『もしがく』菅田将暉との競演で浮かび上がる俳優力

 いよいよ、第10話。あっという間に第10話。まだ、第10話ーー。放送中のドラマ『もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう』(フジテレビ系/以下、『もしがく』)の展開の捉え方は、人それぞれだろう。個人的には「いよいよ!」と「あっという間!」という気持ちが同居しているものの、これらと同時に「まだ10話か……」と感じていたりもする。このドタバタ喜劇の着地点が、いまだに見えないからだ。しかもそこへ、レギュラーメンバー以外の何人もの個性的なキャラクターたちが現れては展開をかき乱す。さらに着地点が見えなくなる……。ここではそんな作品をにぎやかなものにしているひとり、トロに注目してみたい。演じているのは生田斗真である。

 本作は、三谷幸喜が脚本を手がける青春群像劇。1984年の渋谷を舞台に、個性豊かなキャラクターたちが笑いあり涙ありのドタバタ喜劇を繰り広げる作品だ。物語の中心地は、「八分坂」という架空の町にあるWS劇場。ここに、演劇青年の久部三成(菅田将暉)がやってきたことからすべてははじまった。彼とともにWS劇場に集う多彩な面々がシェイクスピア作品を上演し、劇場の再建に挑んでいるところなのである。

 生田が演じる“トロ”ことトロ田万吉は、倖田リカ(二階堂ふみ)の元情夫だというヤクザ者。第6話にいきなり姿を現し、続いて第7話と第8話にも登場した。彼はWS劇場にやってきては、舞台上で懸命に演じる俳優らに「下手くそ!」などとヤジを飛ばすような人間で、久部たちの敵だ。しかもトロはリカを連れ去ろうとしている。自分の借金返済のため、リカに働かせようというのだ。最低な男である。

 これを生田はじつに軽妙に演じてみせた。クズはクズでも“情夫”というだけあって、トロには独特の色気がある。生田が自己陶酔的な演技に徹していたからだと思う。声や視線といったすべてに、それが表れていただろう。

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