『小さい頃は、神様がいて』“渉”北村有起哉のまっすぐな本心 温かさが静かに流れた第8話

 離婚を決めたはずなのに、なぜか距離が縮まっていく。フジテレビ木曜劇場『小さい頃は、神様がいて』第8話は、離婚の期限が迫る中で、小倉家の4人があらためて互いの気持ちを見つめ直す回となった。さらに、奈央(小野花梨)と志保(石井杏奈)の新たな船出、永島夫妻の奮闘と涙など、たそがれステイツ全体がひとつの家族として動き出す回でもあった。

 夜更け、ゆず(近藤華)は編集作業に没頭していた。一方、渉(北村有起哉)は、あん(仲間由紀恵)との結婚の際に仲人を務めてくれた会社の先輩の定年祝いに出席していた。酔い潰れた渉は帰宅するなり、ゆずに絡み、寝室であんにこれまでの後悔を語り始める。あの時にもっとできることがあった過去の後悔を何度も繰り返す渉に、あんは「過去を否定しなくていい」と静かに返す。酔いによって緩んだ心が、渉の本心をようやく表に押し出したのだろう。こういう瞬間にこそ、彼の抱えてきた未整理の思いがにじんで見える。

 翌朝、二日酔いの渉にあんが無造作に差し出したのは、離婚届だった。驚いた渉はコーヒーをこぼし、大事な書類なので軽く渡さないでほしいと慌てる。離婚の条件を淡々と説明するあんに対し、渉は思いのほか素直に頷く。そしてあんが借りる部屋を見に行くと告げたことで、ゆず、順(小瀧望)まで同行する話に発展し、急遽小倉家総出の内見ツアーが始まるのだった。娘を一人暮らしさせる父親のように、玄関のセキュリティや治安をしつこく気にかける渉。あんは「また始まった」と呆れ気味だが、その過保護さが渉なりの思いやりであることもわかっている。けれど、それでもやっぱり呆れてしまうのが正直なところだろう。「あんちゃんが幸せにならないなら……離婚したくないんだ」と渉が本音を漏らしたとき、その声には迷いよりも強い覚悟のようなものが静かに宿っていた。

 一方、公園では慎一(草刈正雄)とさとこ(阿川佐和子)が凛(和智柚葉)と真(山本弓月)と遊んでいた。さとこは、両親を亡くしても涙を見せない凛に「一緒に泣こうか」と寄り添うように声をかける。だがその直後、真が道路に転がったボールを追って飛び出し、慎一が間一髪で救い出す。取り返しのつかない過去を持つ慎一とさとこにとって、この瞬間は胸を締めつける出来事だった。

 奈央と志保は、リサイクルショップ店員の提案を受け、キッチンカーを購入するのではなくレンタルする形で新しいスタートを切ることに決める。長年働いてきたスーパー銭湯を退職する2人のために、「たそがれステイツ」の住人たちはサプライズパーティーを企画。渉が巧妙(?)な時間稼ぎを行い、奈央と志保を居酒屋から自宅へ誘導すると、部屋いっぱいに飾られた温かな歓迎が2人を待ち受ける。職場の人間関係に悩み、居心地の悪さを抱えていた奈央と志保に向けて、慎一がかけた「頑張った時間は尊い」という言葉は、涙する2人の心に深く沁みていた。そしてパーティーの終盤、口論を始めた渉とあんを仲直りさせようと、凛が「2人でぎゅーしてください」と無邪気に促す。渉はその流れの中でふいに「あんちゃんのこと、離婚すると決まってからどんどん好きになってるんですよ」と想いをこぼした。それは酔いの勢いではなく、ごまかしようのない渉のまっすぐな本心だった。

 その告白に重なるように、さとこが「今も離婚したいの?」とそっと問いかける。ここで本編は終わってしまったが、あんはどんな言葉を返すのだろうか。本来なら別れへ向かって進んでいるはずの時間が、気づけば夫婦と住人たちの距離をゆっくりと近づけていく。第8話は、そんな温かさが静かに流れ続ける回だった。

小さい頃は、神様がいて

岡田惠和が完全オリジナル脚本を手がけるホームコメディー。3階建てのレトロマンションに住む、3家族の住人たちの物語が紡がれる。

■放送情報
『小さい頃は、神様がいて』
フジテレビ系にて、 毎週木曜22:00~22:54放送
出演:北村有起哉、小野花梨、石井杏奈、小瀧望、近藤華、阿川佐和子、草刈正雄、仲間由紀恵
脚本:岡田惠和
主題歌:松任谷由実
音楽:フジモトヨシタカ
演出:酒井麻衣
プロデュース:田淵麻子
制作プロデュース:熊谷理恵、渡邉美咲
制作協力:大映テレビ
制作著作:フジテレビ
©︎フジテレビ
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