桜田ひより×佐野勇斗『ESCAPE』は“青春ドラマ”として今期No.1 心地よい善意の描き方

 桜田ひよりは、子役時代から活躍する若手女優で、2024年に放送された連続ドラマ『あの子のこども』(カンテレ・フジテレビ系)では、同級生の恋人の子を妊娠して、産むかどうかで葛藤する女子高生を演じ、女優として高く評価された。『ESCAPE』のハチは、表向きは清楚で知的な社長令嬢だが、実は気が強いタフな女性で、劇中では合気道も披露する。

 一方、佐野勇斗は今年の夏クールに放送された連続ドラマ『ひとりでしにたい』(NHK総合)では、エリート官僚の青年を演じたが、今作のリンダでは金髪に染めたヤンキー風の青年を演じている。

 桜田も佐野も、これまで演じてきた役柄とは違い、“口調も行動も荒々しいが、実は凄く優しい若者”として見事にハマっており、「この二人なら困っている人がいたら放っておけないよなぁ」という説得力が、立ち居振る舞いに表れている。

 特に佐野は、学がなくて粗暴だが、根は優しくて鋭い洞察力を持っているリンダを楽しそうに演じており、『池袋ウエストゲートパーク』(TBS系)に出演していた20代の頃の長瀬智也を彷彿とさせる存在感を見せている。

 劇中では二人で芝居する場面が多いのだが、お互いの主張を乱暴な口調でぶつけ合う、丁々発止のやりとりがとても楽しい。また、変装して行動しているため、二人の衣装や髪型がどんどん変わっていく様子は、ファッションショー的な面白さもある。

 誘拐犯と人質という立場だった二人の関係が少しずつ変化していくのが本作の見どころだが、逃避行の中で生まれる非日常の中の日常とでも言うような、ハチとリンダの甘酸っぱいやりとりは、青春ドラマとしても見応えがある。

 特に第6話でハチとリンダが江の島にタクシーでたどり着き、夜中の浜辺ではしゃぐ場面が素晴らしかった。夜の浜辺で、ハチは自分に「さとり」の力があることをリンダに告白する。その意味でとてもシリアスな場面なのだが、最終的にコミカルで微笑ましい空気になるのは、本作らしいと感じる。

 様々な謎が劇中にちりばめられたクライムサスペンスだが、最終的にハチとリンダの甘酸っぱいやりとりが一番輝いて見えるのが『ESCAPE』の面白さではないかと思う。

ESCAPE それは誘拐のはずだった

ひかわかよが脚本を手掛けたサスペンスドラマ。20歳の誕生日に誘拐された八神製薬の令嬢・結以は、身代金目的の犯人になぜか「一緒に逃げてほしい」と懇願する。彼女の真の目的とは一体何か。

■放送情報
『ESCAPE それは誘拐のはずだった』
日本テレビ系にて、毎週水曜22:00~23:00放送
出演:桜田ひより、佐野勇斗、北村一輝、志田未来、富田靖子、山口馬木也、松尾諭、結木滉星、ファーストサマーウイカ
脚本:ひかわかよ
演出:小室直子、長沼誠ほか
チーフプロデューサー:荻野哲弘
プロデューサー:秋元孝之、明石広人
制作協力:オフィスクレッシェンド
©日本テレビ
公式サイト:https://www.ntv.co.jp/escape/
公式X(旧Twitter):https://x.com/escape_ntv

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