『終幕のロンド』風吹ジュンが演じた最後の輝き　すれ違うそれぞれの愛の形

　11月24日に放送された『終幕のロンド －もう二度と、会えないあなたに－』（カンテレ・フジテレビ系）第7話では、遺品整理と10年前の事件が交差した。

　碧（小澤竜心）が病院に搬送されたと聞いて駆けつけた樹（草彅剛）と磯部（中村雅俊）。走行中の車から飛び降りた碧は、闇バイトに誘われていた。責任を感じてHeaven’s Messengerを辞めると申し出る碧を磯部は叱りつける。碧が金を稼ごうとしたのは、磯部が集団訴訟に加わるための費用を工面するためで、それを知った磯部は慚愧の念に駆られる。

　磯部と妻の美佐江（大島蓉子）は、亡き文哉（米田惠亮）の面影を碧に重ねていたことに気づく。文哉がこの世にいないことを受け入れた磯部のもとに、遺品整理の依頼が舞い込む。亡くなったのは、御厨ホームズでチームリーダーを務めた男性だった。

　ゆっくりと着実にドラマの中で時間は過ぎていく。それを感じさせるのが、こはる（風吹ジュン）だ。樹と真琴（中村ゆり）が開いてくれた誕生会を前に、こはるは「来年は来ないもんね」とつぶやく。樹の息子の陸（永瀬矢紘）も参加して、楽しい時間は永遠に続くようだった。はかなく消えていく花火が命のメタファーだったとしても。

　いくつもの伏線が現れては消える『終幕のロンド』で、それらがもつれあいながら合流するのが第7話だった。遺品整理を依頼された故人の小林太陽（末廣拓也）は、ビルから飛び降りて命を絶った。家族のために進学を諦めて働いていた故人は、御厨ホームズの14人目の犠牲者だった。同居人と遺族の立ち合いのもと、樹たちは遺品整理を進める。故人の弟である陽翔（山時聡真）は遺品を受け取らず、兄の死から立ち直れずにいた。

　故人と残された遺族。磯部が「生きてる人間は毎年一つずつ歳をとるからな」と言ったように、一方の時間は止まったままであるのに対して、もう一方は現在進行形で時を刻む。両者の隔たりは開くばかりだ。残された者は、先に逝った人間の考えを知ることができない。何も言わずに旅立った兄を前に、陽翔は自分を責めるほかない。

　死者は声を発しない。いや、発しないのではなく、発することができないのだ。「頑張ってぎりぎりで立っている人間は、人に弱みを見せることができない」と磯部は話す。ボロボロになるまで働いて命を落とした太陽の無念さは、息子を死なせてしまった磯部の胸に響いた。それは沈黙を貫いていた磯部が立ち上がる理由になった。

　第7話は登場人物の愛のかたちを描いており、秘めた本心があらわになった。結婚に乗り気ではない彩芽（月城かなと）の意中の相手が真琴であること。真琴は、利人（要潤）に離婚してほしいと言う。その理由は「欲しいものが違う」から。利人と逢瀬を重ねる静音（国仲涼子）は、画集『ギリアスの実』をくれた相手を「不器用でバカがつくほど正直」と形容する。それぞれの思いがすれ違う様子は、見ていて切なくなる。

　そんな中で、ゆずは（八木莉可子）と海斗（塩野瑛久）の恋模様は素直に応援したくなる。母の依存を脱して自分の足で歩もうとするゆずはを、海斗は支えようとするのだが、二人のピュアさは、一方通行で行き止まりの関係が多い今作において一服の清涼剤のようだった。

　こはるの死は突然だっただけに、受け止めきれない視聴者もいたかもしれない。何の前ぶれもなく死は訪れる。心残りなく、身近な人に見守られてこはるは最期を迎えた。海への散骨を希望したこはるは、残された人に負担をかけることを望まなかっただろう。死にゆくこはるは自らの人生を自らの手で締めくくった。残された人々の記憶の中に、こはるはいつまでも息づくだろう。その笑顔とともに。

■放送情報
『終幕のロンド －もう二度と、会えないあなたに－』
カンテレ・フジテレビ系にて、毎週月曜22:00～放送
出演：草彅剛、中村ゆり、八木莉可子、塩野瑛久、長井短、小澤竜心、石山順征、永瀬矢紘、要潤、国仲涼子、古川雄大、月城かなと、大島蓉子、小柳ルミ子、村上弘明、中村雅俊、風吹ジュン
脚本：高橋美幸
演出：宝来忠昭、洞功二
演出・プロデューサー：三宅喜重
プロデューサー：河西秀幸、三方祐人、阿部優香子
音楽：菅野祐悟
主題歌：千葉雄喜 「幸せってなに？」 （Warner Music Japan）
制作協力：ジニアス
制作著作：カンテレ
©︎カンテレ
公式サイト：https://www.ktv.jp/shumaku-rondo/
公式X（旧Twitter）：@shumaku_rondo
公式Instagram：＠shumaku_rondo