西村瑞樹、大水洋介、ひょうろく 『もしがく』を底上げする三者三様の“笑いのプロ”たち

 “お笑い”の領域に軸足を置く者たちが、映画やドラマ、演劇の世界をも豊かにする。これまでそんなふうにして、日本のエンターテインメント界は発展し続けてきた。現代の多くの名作に、“笑いのプロ”たちの姿がある。今季のドラマでいえば、その最たるものが『もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう』(フジテレビ系/以下、『もしがく』)だろう。バイきんぐの西村瑞樹、ラバーガールの大水洋介、ひょうろくの三者が好演を刻んでいる。

 本作は、三谷幸喜の脚本による青春群像劇。1984年の渋谷を舞台に、主演の菅田将暉を筆頭とした俳優たちが個性的なキャラクターに扮してドタバタ喜劇を繰り広げる作品だ。この物語は「八分坂」という架空の町にあるWS劇場に久部三成(菅田将暉)という演劇青年がやってきたことからはじまった。「八分坂」の住人たちはいま、演劇の力でWS劇場の再建に挑んでいるところである。

 そんな『もしがく』における3人の芸人の、それぞれの役割を見てみよう。

 バイきんぐの西村が演じるのは、「コントオブキングス」というお笑いコンビを組んでいる芸人の彗星フォルモン。なかなかに頑固な性格の持ち主で、その言動はどこかいつも荒っぽい。そんなフォルモンの相方の王子はるおを演じるのが、ラバーガールの大水だ。彼はいつだって穏やかで、とても素朴な人柄のキャラクター。このふたりは対照的な存在として、ともに『もしがく』の世界で“イイ味”を出している。

 ラバーガールの大水は、俳優としても広く認識されているのではないだろうか。これまで多くの作品に出演を果たしてきた。今年であればドラマ『御上先生』(TBS系)に配信ドラマ『笑ゥせぇるすまん』(Prime Video)、さらには話題作となった映画『#真相をお話しします』にも登場。いずれも私たちの生きる現実世界と比べたら、かなりフィクショナルな作品だ。

 そのような作品たちだからこそ、大水が体現する素朴なキャラクターは生きる。いつも彼の存在が作品に絶妙なリアリティをもたらし、視聴者/観客が自然と作品世界に足を踏み入れられる動線を作っている。いくつかのキャラクターたちを思い出してみてほしい。彼らと今日どこかですれ違った気がしてこないだろうか。王子はるおもまたそうなのだ。

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