『ザ・ロイヤルファミリー』『あんたが』『フェイクマミー』TBSが2025年秋ドラマ席巻の理由

 2025年秋クールのテレビドラマはTBSドラマ3作が絶好調だ。

『ザ・ロイヤルファミリー』

 まず、日曜劇場(日曜21時~)で放送されている『ザ・ロイヤルファミリー』(TBS系)。

 本作は、税理士の栗須栄治(妻夫木聡)が、大手人材派遣会社・ロイヤルヒューマン社の創業者で社長の山王耕造(佐藤浩市)と共に赤字続きの競馬事業部を立て直すために、G1レースの最高峰である有馬記念での優勝を目指す物語。

 競馬業界の内幕を描いた珍しいドラマだが、大企業内部の権力闘争と、生産牧場、騎手、調教師といった競馬関係者の人間模様が丁寧に描かれており、日曜劇場らしい大人が楽しめるヒューマンドラマとなっている。

 注目ポイントは、チーフ演出の塚原あゆ子が生み出すスケールの壮大な映像。

『ザ・ロイヤルファミリー』©TBSスパークル/TBS

 2024年、日曜劇場で放送された『海に眠るダイヤモンド』では、CGとロケ映像とセットの映像を合成することで昭和の端島(軍艦島)の圧倒的なビジュアルを生み出した塚原だが、今作では競馬場でのレースシーンをダイナミックな映像で表現しようと挑戦している。

 また、原作は早見和真の同名小説(新潮社)で、脚本は早見和真の小説をドラマ化した『95』(テレ東系)や、映画『桐島、部活やめるってよ』で知られる喜安浩平が担当している。早見も喜安も、日曜劇場のドラマは初めてだが、2010年代の池井戸潤原作のドラマのフォーマットを引き継ぎつつも、物語はどこかクールで、日本再生の物語をあまり引き受けていないのが『半沢直樹』(TBS系)や『下町ロケット』(TBS系)との大きな違いだ。

『じゃあ、あんたが作ってみろよ』

 一方、秋クール最大の話題作となっているのが、火曜ドラマ(火曜22時~)で放送されている『じゃあ、あんたが作ってみろよ』(TBS系)。

 本作は、亭主関白的な考えの持ち主で料理は女が作るものだと思っている海老原勝男(竹内涼真)が恋人の山岸鮎美(夏帆)にプロポーズしたら別れを切り出され、失恋する場面から始まる恋愛ドラマ。

 鮎美のことが忘れられない勝男は、彼女の得意料理だった筑前煮を作ることに挑戦することで、いつも料理を作ってくれた鮎美に感謝し、料理作りにハマっていく。

 勝男の動向に注目が集まっている本作だが、第1話の勝男は、視聴者から反感を買うクソ男として登場した。しかしすぐに反省し、話数を重ねるごとに成長し、今では人気キャラとなっている。 

『じゃあ、あんたが作ってみろよ』©TBSスパークル/TBS

 原作は谷口菜津子の同名漫画(ぶんか社)で、メインの脚本家は劇団アンパサンドの安藤奎。物語はドラマ向けに脚色されており、勝男と鮎美のキャラクターも演じる竹内涼真と夏帆のイメージに寄せられている。

 その結果、原作の魅力を活かした上で、ドラマならではの表現に落とし込むことに成功している。

 話題作の多い秋ドラマの中で本作が頭一つ抜けているのは、恋愛と料理という視聴者にとって身近なテーマを丁寧に描いているからだろう。『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系)や『西園寺さんは家事をしない』(TBS系)といった火曜ドラマは、日常生活と家族と恋愛を題材にした作品を作り続けてきた。本作もそんな火曜ドラマの伝統を引き継いだうえで、新しいことに挑戦しているドラマだと言える。

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