上田麗奈×石川由依、“死を望む少女”の演技で得た感情 「あべこべ」だった出会いを語り合う

 TVアニメ『私を喰べたい、ひとでなし』では、死を望む少女・比名子と、その血肉を求める人魚・汐莉の関係が群像ドラマ×妖怪ホラーとして描かれている。

 比名子と汐莉を演じているのはそれぞれ上田麗奈と石川由依。家族を亡くした過去から死を望む少女、その彼女を喰らおうとする人魚という複雑な関係をどのように演じているのか。繊細な演技のアプローチを明かした。【インタビューの最後には、サイン入りチェキプレゼント企画あり】

比名子と汐莉の繊細な関係

(左から)石川由依×上田麗奈

——比名子と汐莉が初めて対面した第1話のシーンの演技で意識したことについて教えてください。特に、汐莉の「身投げ」という言葉に反応して「失礼なこと言わないで」と発したときの比名子の表情が印象的でした。

上田麗奈(以下、上田):序盤の比名子は「感情を抱くことすらできなくなってきている」「持つ気力がなくなっている状態にしたい」とディレクションしていただいていたので、それゆえに基本的には淡々としたお芝居になっていました。でもこの「失礼なこと言わないで」というセリフに関しては、比名子の中ですごく大事にしていることに直接触れられてしまったからこその怒りのようなものが湧いてきてしまったのかなと思って演じていました。「亡くなった家族のもとに行きたい」「でもそうしてはいけない」と自らにルールを設けていて、それを守るのがすごくしんどくて、こんなに頑張って守っているのに、と……。無気力な彼女の中にも残っている強い思いが浮き上がってしまったんだろうなと思っていました。

石川由依(以下、石川):汐莉は、後々出てくるような、ちょっと明るめで、それが逆に違和感になるような雰囲気で作っていったのですが、現実感がないような、会話をしているようでしていないかのような喋り方にしてほしいというディレクションがありました。このシーンでは汐莉もあまり人間社会に慣れていないのもあって、少し煽っているような感じになってしまっているんですが、たぶんあまり悪気なく話していて、最初の出会いはどうも噛み合っていないような、比名子の思いも汐莉には完全には届いていなかったり、2人のあべこべな出会いというか、ザワッとした感じが出るといいのかなと思っていました。

(左から)石川由依×上田麗奈

——お2人とも声量はおとなしめですが、すごく繊細な演技をされていると感じました。小さな声でもしっかり感情のニュアンスを乗せるために意識していることはあるのでしょうか?

上田:感覚的なことなんですけれど、声のボリュームは小さかったとしても飛距離はある……と意識しているかもしれません。もしボリュームがもっと大きければ、これだけ離れた相手にも届きそうだなとか、ボリュームはないんだけれど、飛距離はある気持ちで、マイクが絶対に拾ってくれると信じて飛び込むようにしていました……。

石川:本当に比名子が全然声を出さないということで、マイクの音量をかなり上げていたんです。自分たちでも気づかないレベルのノイズまで拾っていたらしくて、なるべく静かに、「みんな、うえしゃまが喋ってるときは動くな……!」みたいな雰囲気で収録していました(笑)。

——今回比名子を演じたことで、新しい演技のアプローチが掴めたと感じることはありましたか?

上田:比名子ならではだと思ったのは、もし私が比名子と同じ状況だったら恐怖を感じたり、「逃げなきゃ」って焦ったり、緊張感を抱くようなシーンでも、比名子は死に対して希望を持っている子だから、そういった恐れや焦り、緊張を抱かない。何かが突然迫ってきても、ビックリしたりはするけど、そこに恐怖が乗っからない。そういう部分は比名子だからこその演技になったかなと思います。

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