柳楽優弥、『ガンニバル』の怪演を経て『九条の大罪』へ 実写化のポイントを解説
『闇金ウシジマくん』の作者・真鍋昌平による最新作『九条の大罪』が、実写化されることが発表された。2026年春よりNetflixで世界独占配信される予定だという。
同作は法とモラルの極限を描き出した衝撃作で、連載が始まった当初から大きな話題を呼んできた。本稿ではその危険な魅力と実写化の注目ポイントについて紹介していこう。
『闇金ウシジマくん』の系譜にある、人間の“裏”を描くリアリズム
主人公の九条間人は“法の抜け道”を知り尽くしている弁護士。世間では悪徳弁護士扱いされており、実際に反社の人間からの依頼も平気で受けるというスタンスだ。
たとえば第1話では飲酒運転で交通事故を起こした加害者の弁護を引き受け、実刑を避けて執行猶予を勝ち取ることに成功。それに対して被害者の親子は法律の知識に疎く、弁護士を付けなかったため、子どもの片足が奪われたにもかかわらず最低限の示談金しか受け取れない……という何とも胸クソの悪い展開が描かれる。
裁判の結果がニュースで報じられ、九条は世間からバッシングを受けるものの、平然とした顔で「思想信条がないのが弁護士だ」と言ってのける。九条にとって法律と道徳は別物であり、どれだけ道徳に反する相手であっても依頼人であるかぎり全力で擁護するという思想で動いているのだった。
その一方、九条は一般的な悪徳弁護士のイメージにも当てはまらない。金銭のために悪人に手を貸しているわけではなく、むしろ他の弁護士よりも薄謝で依頼を引き受けているようだ。また必ずしも悪人ばかりを弁護するわけでもなく、老人たちを苦しめて金を搾り取る悪徳介護施設と対決するエピソードなども描かれている。
私生活では離婚した元妻に全財産を渡し、雑居ビルの屋上でテント暮らしを送っているなど、謎めいたところが多いが、ときには人間らしい一面を見せることも。徐々にその素顔が浮かび上がってくるなかで、「この男は一体何を考えて弁護士をやっているのか」という興味を否応なく掻き立てられてしまう。
また東大法学部を首席で卒業したエリートでありながら、悪評高い九条のもとで居候弁護士(イソ弁)として働く烏丸真司など、一筋縄では理解できない登場人物たちも登場し、作品の世界に奥行を生み出している。
そのほか、弁護の依頼を通して関わる人間たちの壮絶な人生が描かれることも大きな見どころ。『闇金ウシジマくん』と同様、人間描写の奥深さや、社会の仕組みを知らずに生きることの恐ろしさを痛感させられる。
マンガで読むだけでもグロテスクな描写が多いので、実写ではさらにその衝撃が強くなりそうだ。とくにTVドラマではなくNetflixシリーズでの実写化なので、“手加減なし”で暴力や悲惨な人生の現実が描き出されるのではないだろうか。
柳楽優弥×松村北斗が挑む、“正義”と“悪”の狭間
またメインキャストも大きな注目ポイントと言えるだろう。まず九条役を演じるのは、柳楽優弥。ディズニープラスの大ヒットドラマ『ガンニバル』で“怪演”を披露したことも記憶に新しい実力派役者なので、真に迫った演技で弁護士界の異端児を演じてくれるはずだ。
さらに烏丸役を演じる松村北斗は、SixTONESのメンバーとして活躍する一方、近年は役者としても強い存在感を発揮している逸材。三宅唱監督の『夜明けのすべて』や塚原あゆ子監督の『ファーストキス 1ST KISS』などの映画で本格派の演技を見せつけており、10月10日から公開が始まった実写版『秒速5センチメートル』では主人公・遠野貴樹役を演じている。
ほかにも池田エライザに町田啓太、音尾琢真、ムロツヨシと、演技力に定評のある役者が揃ったキャスティングとなっており、複雑な人間の心理を描いた同作の配役としてはかなり期待できそうだ。
「正義とは何か」「法律とは何のためにあるのか」など、ハードな問いを投げかけてくる衝撃の作品『九条の大罪』。実写化でその世界観がいかに表現されるのか、続報にも注目していきたい。
■配信情報
Netflixシリーズ『九条の大罪』
Netflixにて、2026年春世界独占配信
出演:柳楽優弥、松村北斗、池田エライザ、町田啓太、音尾琢真、ムロツヨシ
原作:真鍋昌平『九条の大罪』(小学館『週刊ビッグコミックスピリッツ』連載中)
監督:土井裕泰(TBSテレビ)、山本剛義(TBSスパークル)、足立博
脚本:根本ノンジ
プロデューサー:那須田淳(TBSテレビ)
エグゼクティブプロデューサー:髙橋信一(Netflix)、杉山香織(TBSテレビ)
制作協力:TBSスパークル
製作著作:TBSテレビ
配信:Netflix