宇野維正の映画興行分析
初登場2位の『秒速5センチメートル』は大健闘? それとも物足りない?
10月第2週の動員ランキングは、劇場版『チェンソーマン レゼ篇』が週末3日間で動員40万6000人、興収6億4300万円をあげて4週連続1位となった。10月13日(祝)までの公開から25日間の累計動員は374万700人、累計興収は57億200万円。これで17週連続で東宝配給(共同配給含む)作品が1位。しかも、先々週はトップ5を独占。先週末もトップ4を独占、トップ10の7作品が東宝配給(共同配給含む)作品となっている。
2位に初登場したのは奥山由之監督、松村北斗主演、劇場版『チェンソーマン レゼ篇』と同じく米津玄師が主題歌を手がけた『秒速5センチメートル』。新海誠監督のアニメーション作品の実写化だが、オープニング3日間の動員27万8000人、興収4億200万円という成績は、錚々たるヒットメイカーの名前が並んだ作品としては今ひとつ迫力に欠けるすべり出しとなった。今年、同じ東宝配給で松村北斗がメインロールを務めた『ファーストキス 1ST KISS』との同期間の興収比では158%。『ファーストキス 1ST KISS』はロングヒットとなって最終的には興収28.2億円まで伸びたが、とりあえずそれを超える30億円あたりが現実的な目標値となりそうだ。
新海誠監督のオリジナル版『秒速5センチメートル』が公開されたのは18年前の2007年。独立系の配給で、初公開タイミングでは単館系の映画館のみでの公開。それでも大健闘の興収約1億円を記録した後、2016年の『君の名は。』での新海誠の大ブレイクを経て、劇場での再上映やテレビ放送など様々な機会によって多くの観客や視聴者に時間をかけて届けられてきた作品だ。通常、アニメーション作品の実写映画化はオリジナルのヒットを受けて企画されることが多いが、そういう意味では今回の実写版『秒速5センチメートル』は特異な例と言える。作品の尺もオリジナルの63分から121分と約2倍近く長くなっていて、実写化にあたってはオリジナルにはなかった展開やキャラクターが加えられている。そのようにオリジナルからの大胆な改変のわりには、ソーシャルメディア上でそれほど大々的に「賛否渦巻く」のような展開になっていないのは、劇場版『チェンソーマン レゼ篇』に押しかけている若い観客層にとって、もはやオリジナル版『秒速5センチメートル』も「ひと昔前の作品」になってしまっているからなのかもしれない。
■公開情報
『秒速5センチメートル』
全国公開中
出演:松村北斗、高畑充希、森七菜、青木柚、木竜麻生、上田悠斗、白山乃愛、岡部たかし、中田青渚、田村健太郎、戸塚純貴、蓮見翔、又吉直樹、堀内敬子、佐藤緋美、白本彩奈、宮﨑あおい、吉岡秀隆
監督:奥山由之
原作:新海誠劇場アニメーション『秒速5センチメートル』
脚本:鈴木史子
音楽:江﨑文武
主題歌:米津玄師「1991」
劇中歌:山崎まさよし「One more time, One more chance 〜劇場用実写映画『秒速5センチメートル』Remaster〜」
制作プロダクション:Spoon.
配給:東宝
©2025「秒速5センチメートル」製作委員会
公式サイト:https://5cm-movie.jp
公式X(旧Twitter): https://x.com/5cm_movie_2025
公式Instagram: https://www.instagram.com/5cm_movie_2025/
公式TikTok: https://www.tiktok.com/@5cm_movie_2025
『今週の映画ランキング』(興行通信社):https://www.kogyotsushin.com/archives/weekend/