『新東京水上警察』日下部役で複雑な感情を体現 加藤シゲアキの“表現者”としての現在地
とはいえ、その後の感情の動きも忙しい。燃え上がったやる気も束の間、湾岸署から見下されている新東京水上警察署には事件捜査の班さえ割り振られず、日下部は再び眉間にしわを寄せ苛立ちを見せた。また、知らない間に一人で捜査を大きく進展させていた碇に対しては、驚きとも尊敬とも嫉妬とも取れる表情で見つめ、事件の手柄を湾岸署に横取りされてしまった時にはやり場のない怒りを海に大声でぶつける。さらには第1話の最後にも、犯人の工作を見破った碇の考えを知って悔しさを滲ませていた。事件は進展しているのに、一人だけずっと険しい表情なのだ。嫉妬心や怒り、向上心や正義感が綯い交ぜになった感情、さらには前に進みたくても思うように進めない息苦しさが、日下部をまとっている。彼はこれをどう払拭して、刑事として成長していくのか。公式サイトの人物紹介には「“直感派”の碇とはまさに水と油の関係で、たびたび衝突するが、共に困難を乗り越えることで信頼し成長していく」とある。第1話だけでもこれほどまでに注目してしまう表現を見せてくれたからこそ、今後の日下部の展開に期待が高まる。
そんな日下部を演じる加藤シゲアキがここ数年で演じた役柄には、どれも一言では言い表せない感情が渦巻いていた。池井戸潤原作の『連続ドラマW シャイロックの子供たち』(WOWOW)では順調に仕事をこなし妻子とも幸せに暮らす傍ら、重大な悩みを秘かに抱える銀行員を熱演し、『六畳間のピアノマン』(NHK総合)ではパワハラ上司の元で働く新入社員、『満天のゴール』(NHK BS4K)では海辺の町で医師として懸命に生きながらも、心にわだかまりを抱えるキャラクター像を演じ切った。また、時代劇『あきない世傳 金と銀』(NHK BS)では呉服屋の次男役に。商売の才があり、うつけの長男に変わって店主になりたいという気持ちや上昇志向が強い性格で、仕事に囚われているところは日下部と重なる部分もある。
さらに、『連続ドラマW 夜がどれほど暗くても』(WOWOW)では週刊誌の記者として、ジャーナリストの在り方や上司の志賀(上川隆也)のやり方に疑問を抱きながらも、ある事件に巻き込まれる志賀を取材するうちに、彼の考えを理解していき、何かが解けたような顔を見せたのも印象的だった。自分なりに内に秘める正義や譲れないものがあって、それを武器に突っ走ってしまう。しかし途中で転機をくれる人と出会うことで、自分の考えも柔軟に変化し、良い方向に進んでいく。その人生の過程にある、絡み合った感情に引っ掛かって抜け出せない苦しさを、どれも繊細に表現しているように感じた。
加藤は、小説家として物語を世の中に生み出し、役者として人の心に入り込みながら、舞台の脚本やプロデューサーも手掛け、もちろんNEWSのメンバーとして多くの人に希望を与えている。中尾明慶のYouTubeチャンネルに出演した際、作家もアイドルも役者も「全部お芝居だと思ってる」(※)と語っていた。常に“表現者”として生き、どんな立場も楽しんでいる。そんな加藤が演じる日下部は、どこまで突き進むのか。碇、礼子との関係や、内面の変化も楽しみに第2話以降も観ていきたい。
参照
※ https://www.youtube.com/watch?v=XskY4cPSur0-cW17g
■放送情報
火9ドラマ『新東京水上警察』
フジテレビ系にて、毎週火曜21:00~21:54放送
出演:佐藤隆太、加藤シゲアキ、山下美月、中尾明慶、齋藤璃佑、山口紗弥加、皆川猿時、椎名桔平ほか
原作:吉川英梨『新東京水上警察』シリーズ(講談社文庫)
脚本:我人祥太
主題歌:Aqua Timez「if you come」(Sony Music Labels Inc.)
音楽:得田真裕
演出:西岡和宏、柳沢凌介、土方政人、朝比奈陽子
プロデュース:大野公紀
制作プロデュース:山崎淳子
制作協力:共同テレビ
制作著作:フジテレビ
©︎吉川英梨/講談社 ©︎フジテレビ
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