黒崎煌代が“何もしない”芝居でさらなる高みへ “本物”の団塚唯我監督から得たもの
「何もしない美学」を信じて
――自伝的要素があるとのことですが、黒崎さんから見る団塚監督はどのような方なのですか?
黒崎:基本的に優しくて楽しい人なんですけど、たまに本当に鋭い目をするときがあって、それが魅力的な方なんです。その鋭さは本当に一瞬で、その一瞬に監督の過去が垣間見えるような気がします。僕もそれを芝居に取り入れようと思ったんですが、全然できませんでした。
――団塚監督のような若い世代の監督と一緒に作品を作ったことで、作り手側への意識に変化はありましたか?
黒崎:実はずっと裏方にも興味があったのですが、団塚監督と出会って、「もうしばらく俳優を頑張ろう」と思いました。「本物」を目の当たりにして、そんな簡単にできることじゃないなと痛感しました。同世代である団塚監督と、今このタイミングで出会えたのは、本当にありがたいことです。これから一緒に何か成長していけたらと思います。
――黒崎さんの出演作を拝見していると、これまでは明るい役や場をかき乱すような役が多かった印象ですが、今回はまた違った姿で。蓮の運転中の視線にはカッコよさと同時に、怖さも感じました。それは今おっしゃっていた監督の鋭さと繋がる部分があったのでしょうか?
黒崎:もちろん監督の影響もありますが、この映画での僕自身のテーマとして、「基本的に何もしない」ということを掲げていました。主演ではありますが、本作は家族4人が主役のような物語です。これまでの作品では“動く”芝居をしてきましたが、今回はそれを全部封じ込めて、「何もしない美学」を信じてやってみました。
――今年も多くの作品に出演されていますが、デビュー当時と今で、俳優としてのリズムやアプローチに変化も?
黒崎:全然違いますね。デビュー当時は、今では到底出せないような、ただワクワクしながら仕事をしている感じでした。ちょうどNHKドラマ『地震のあとで』の頃に、少し違うアプローチをしたいなと思って挑戦したんです。あれが個人的には一つのきっかけかもしれません。『見はらし世代』ではいろいろやってきたからこそ、「何もしない」という選択ができました。蓮は渋谷で働いているごく普通の青年なので、何か特別な技術を習得するといった役作りも必要なく、ある意味、一番役作りをしなかったかもしれません。“何もしない”ほうが、観ている方へ伝わる量が多いんだなと、新たな発見がありました。
――この作品を経て、次なる目標として考えていることはありますか?
黒崎:次は、何かに翻弄される役をやってみたいです。言ってしまえばコメディー的なものがしたいのですが、コメディーって、演じる側が面白く演じようとすると面白くなくなってしまうことが多いですよね。本当に面白いコメディー芝居というのは、「やる芝居」と「何もしない芝居」のちょうど中間にあると思うので、そこを目指したいです。
――最後に、この『見はらし世代』は世代を問わない作品だと感じます。蓮と同じ20代、30代はもちろん、親世代の方々にも響くものがあると思います。主演された立場として、どのような方々に観てほしいですか?
黒崎:もちろん日本の皆さん全員に観ていただきたいですが、やはり東京に住んでいる方々には特に観てほしいです。これは「東京の映画」であり、「渋谷の映画」なので。そして、おっしゃる通り、全世代に観ていただける映画なんじゃないかなと思っています。
■公開情報
『見はらし世代』
全国公開中
出演:黒崎煌代、遠藤憲一、井川遥、木竜麻生、菊池亜希子、中村蒼、中山慎悟、吉岡睦雄、蘇鈺淳、服部樹咲、石田莉子、荒生凛太郎
監督・脚本:団塚唯我
企画・製作:山上徹二郎
製作:本間憲、金子幸輔
プロデューサー:山上賢治
アソシエイト プロデューサー:鈴木俊明、菊地陽介
音楽:寺西涼
配給:シグロ
配給協力:インターフィルム、レプロエンタテインメント
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