『ばけばけ』髙石あかり×寛一郎が祝言 めでたくも“別れ”を告げるカウントダウンが複雑
NHK連続テレビ小説『ばけばけ』第10話にて、トキ(髙石あかり)が銀二郎(寛一郎)と祝言を挙げた。松野家の婿として銀二郎が迎え入れられたのだ。
明治時代のお見合いは、女性側がお茶を出した瞬間に全てが決まる。しかし、トキは目を逸らしたまま。現実を帯びてきた結婚を前にして、視線を交わした一瞬で人生を添い遂げる相手が決まる、そのことが怖かったのだ。トキの気持ちを察して銀二郎は、2人きりになることを提案する。
銀二郎と向かったのは、再びの清光院。銀二郎は怪談好きで、さらには“寂しくて切ない”ところが好きだという、トキと感性までも似ていた。傳(堤真一)とのランデブーが予習になり、今度は自身が「松風の血の痕」を解説するトキ。怪談が好きという共通点は運命の相手と思える大きなポイントであるが、決め手となったのは銀二郎が人に寄り添うことができる優しい心の持ち主だということ。話していくうちに銀二郎に惹かれていくトキの心情が、髙石あかりの晴れやかな笑みからありありと伝わってくる。
銀二郎を演じる寛一郎は、『NHKドラマ・ガイド 連続テレビ小説 ばけばけ Part1』のインタビューの中で、「お見合いではありますが、銀二郎はトキに一目惚れしていて、ちゃんと恋に落ちているんですよね。トキは芯のある強い女性なので、銀二郎はそんなところに惹かれたのではないかと思っています」と答えている。祝言で司之介(岡部たかし)にあわせて散切り頭にする、そこに銀二郎の誠実さが表れている気がした。松野家は、気を紛らわすために柱に鉄砲をしたり、乾杯した牛乳で白いヒゲを作って笑い合う、賑やかな家族。銀二郎も温かく迎え入れてくれるだろう。
第10話では、トキの出生について正式に傳とタエ(北川景子)が実の親子であることが明らかになった。18年前の回想にて、雨清水家で生まれたばかりのトキを抱く司之介とフミ(池脇千鶴)。そこにどのような背景があったのかはまだ分からないが、絶望的に寂しい表情を浮かべるタエが観ている者の心を締め付ける。つまりはトキにとって松野家は育ての親ということになるが、それでも本人たちにとっては家族であることは変わらない。そのことを印象付けているのが、夕日に照らされながら牛乳ヒゲで笑い合うシーンであり、「おフミさんここまでよく育て上げましたね」と告げるタエに、「おトキは私の娘でございますけん」と返すフミの言葉だ。近年の朝ドラでは『ブギウギ』(2023年度後期)が産みの母と育ての母というシチュエーションから連想される。
同時に『あんぱん』(2025年度前期)と同様に、ヒロインが“最初”の夫といずれ別れることを視聴者が把握しているという稀有な朝ドラでもある。アメリカ・ニューオリンズで、新聞社の文芸部長として活躍しているレフカダ・ヘブン(トミー・ バストウ)は、同僚のイライザ・ベルズランド(シャーロット・ ケイト・ フォックス)から取材先に日本を提案されていた。2人が出会うまで1875日=約5年後までに、トキと銀二郎が別れを選択をしなければいけなくなる、見方によっては悲しいカウントダウンにもなってしまった。
■放送情報
2025年度後期 NHK連続テレビ小説『ばけばけ』
毎週月曜から金曜8:00〜8:15放送/毎週月曜〜金曜12:45〜13:00再放送
BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送/毎週土曜8:15〜9:30再放送
BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:髙石あかり、トミー・バストウ、吉沢亮、岡部たかし、池脇千鶴、小日向文世、寛一郎、円井わん、さとうほなみ、佐野史郎、北川景子、シャーロット・ケイト・フォックス
作:ふじきみつ彦
音楽:牛尾憲輔
主題歌:ハンバート ハンバート「笑ったり転んだり」
制作統括:橋爪國臣
プロデューサー:田島彰洋、鈴木航、田中陽児、川野秀昭
演出:村橋直樹、泉並敬眞、松岡一史
写真提供=NHK