『チェンソーマン レゼ篇』『閃光のハサウェイ』『ハーモニー』 “上田麗奈沼”アニメを厳選!
『アリスとテレスのまぼろし工場』佐上睦実
上田の到達点として多くのファンが挙げるのが『アリスとテレスのまぼろし工場』だ。2023年公開の劇場アニメで、制作はMAPPA、脚本・監督は岡田麿里が務めている。
物語の舞台となるのは、製鉄所の爆発事故によって時が止まった町。「変化は悪」という空気が蔓延した世界で、14歳の少年・菊入正宗はクラスメイトの佐上睦実、野生の狼のような少女の五実と三角関係に陥っていく。
上田が演じる睦実は謎めいた言動をとるキャラクターで、冒頭では「退屈、根こそぎ吹っ飛んじゃうようなの……見せてあげようか」と正宗を非日常へと誘い出す。しかし徐々にその内面が明かされていくという役柄だ。
上田はそんな睦実を演じるにあたって、いわゆる“アニメ的”な演技ではなく、10代少女のリアルな質感を感じさせる演技を披露。生々しい身体性と繊細な感情の動き、そして静かに燃え上がるような情念を巧みに表現しており、衝撃を与えた。
秋アニメでの活躍にも注目
なお、上田は10月2日から放送が始まった新作アニメ『私を喰べたい、ひとでなし』にて主人公・八百歳比名子(やおとせ・ひなこ)役を演じている。
同作は「八百比丘尼伝説」を下敷きにした百合ダークファンタジー。海辺の街で空虚な日々を過ごしていた比名子の前に、突如人魚の少女・汐莉が現れ、「私は君を食べにきました」と告げるという物語だ。
上田はダウナーな話し方と希死念慮を含んだ息遣いによって、比名子のキャラクター性を表現しており、今後どんなふうに心情の変化を演じていくのか期待が高まる。
ちなみに同作は夏アニメ『わたしが恋人になれるわけないじゃん、ムリムリ!(※ムリじゃなかった!?)』に続く百合アニメとしても話題を呼んでいるため、あらためて上田が“百合声優”として注目を浴びるきっかけにもなりそうだ。
花のように繊細な感情と、爆発するように力強い感情をどちらも表現できるのが上田麗奈という声優の大きな強み。劇場版『チェンソーマン レゼ篇』を入り口に、その表現の深みに踏み入ってみてはいかがだろうか。