日本人が共有してきた“金曜の映画体験” 『金曜ロードショー』40周年を機に功績を辿る

 40年にわたって、金曜の夜を彩ってきた『金曜ロードショー』(日本テレビ系)。1985年10月4日にスタートしたこの番組は、単なる映画枠を超えて「日本のテレビ文化」を語るうえで欠かせない存在となっている。もちろん筆者も、長年お世話になりっぱなし。夕日の海辺をバックに、高らかなトランペットが鳴り響く昔のオープニング映像を、何度目に焼き付けたことか。

 そして10月3日には、40周年を記念して「視聴者が選んだ忘れられない名シーン」を振り返る特別番組が放送される。公式サイトによれば、「過去に放送された作品から、視聴者リクエストの多かったシーンを厳選して一挙大公開」する内容らしい。懐かしさに浸りつつ、改めてこの番組の魅力と文化的意義を考えてみたい。

 『金曜ロードショー』の記念すべき第1回放送は、『007/私を愛したスパイ』。言わずと知れた、ロジャー・ムーア版ボンド映画の代表作。誰もが知る世界的ヒットシリーズを、いきなりぶっ込んできた! 当時はまだレンタルビデオも普及途上で、映画を家庭で楽しむ手段が限られていた時代。そんななか、フライデーナイトのゴールデンタイムに、リビングのテレビで人気映画を観られることは、非常に価値があることだった。

『バック・トゥ・ザ・フューチャー』©1985 Universal City Studios, Inc. All Rights Reserved.

 もちろん『スター・ウォーズ』や『インディ・ジョーンズ』、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』といったハリウッド大作もガンガン放送されていたが、この頃はやたら『刑事コロンボ』が放送されていた時期。時代を反映してか、ジャッキー・チェンやサモ・ハン・キンポー主演の香港カンフー映画もよく流されていた。

 1989年4月1日には『ルパン三世』のテレビスペシャル『バイバイ・リバティー・危機一発!』が放送され、以降、『ヘミングウェイ・ペーパーの謎』(1990年)、『ナポレオンの辞書を奪え』(1991年)、『ロシアより愛をこめて』(1992年)と続いていく。「『金ロー』でしかルパン新作が観られない」という、ブランディングが出来上がった。

『千と千尋の神隠し』©2001 Studio Ghibli・NDDTM

 やがて1990年代後半になると、ジブリ作品が本格的にラインナップ入りを果たす。ジブリ=『金ロー』という方程式が出来上がったのは、この頃から。歴代視聴率TOP5をチェックしてみると、4本がジブリ作品というキラーコンテンツぶりだ(※)。

1. 46.9%『千と千尋の神隠し』2003年1月24日放送
2. 35.1%『もののけ姫』1999年1月22日放送
3. 32.9%『ハウルの動く城』2006年7月21日放送
4. 30.8%『ハリー・ポッターと賢者の石』2004年6月25日放送
5. 29.8%『崖の上のポニョ』2010年2月5日放送

 2000年代以降も、洋邦問わずビッグタイトルが放送されていく。『名探偵コナン』が毎年春に放送され、最新劇場版へのプロモーション効果を発揮する流れも確立。最近では、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』、『ハリー・ポッター』、『ミッション:インポッシブル』、『キングダム』などの人気シリーズを一挙放送というスタイルが定着してきた。

 Netflixやディズニープラスなどサブスクの影響で、最新作を地上波初放送する価値が薄れている現在、おそらく『金曜ロードショー』は“新作の窓口”から、“映画文化の記憶装置”へシフトしている。

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