宇野維正の映画興行分析

『ブラック・ショーマン』好スタート 福山雅治が証明した別次元の根強い支持

 3連休と重なった9月第2週の動員ランキングは、『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』が週末3日間で動員52万3000人、興収8億3000万円をあげて9週連続1位。祝日の9月15日までの公開から60日間の累計動員は2304万2700人、累計興収330億5600万円。2020年に『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』が公開されるまで約20年にわたって歴代国内興収トップに君臨していた『千と千尋の神隠し』の記録316.8億円を上回って、これで『鬼滅の刃』が歴代国内興収のトップ2を独占することに。また、先週末公開された北米をはじめ世界各国でランキング1位を独走していて、国内はともかく、世界興収では『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』を超えるのも時間の問題となっている。

 2位に初登場したのは田中亮監督、福山雅治主演の『ブラック・ショーマン』。オープニング3日間の動員は39万6000人、興収5億5600万。祝日を含むオープニング4日間の動員は53万5500人、興収は7億4400万円。福山雅治にとってフィクション作品の主演映画としては、2022年に公開された同じ東野圭吾原作の『沈黙のパレード』以来3年ぶりとなるが、同じ9月の連休に公開された同作のオープニング4日間の興収は6億9600万円だった。つまり、ここにきて人気をキープしているどころか、主演作の動員力という点では微増しているのだ。

 これは福山雅治本人による発言もあったことなので(つまり事実関係が曖昧なゴシップ的ニュースではないので)敢えてストレートに触れるが、『ブラック・ショーマン』公開の4週前には、(当時の)フジテレビ上層部らとの会合での不適切な過去の言動の内容が報道された。同作の製作幹事がフジテレビであることをふまえると、タイミング的に作品のプロモーションにも影響があったと思われるが(特番や『容疑者Xの献身』の放送などはあったが番宣のための番組出演は通常の「フジテレビ映画」と比べて少なかった)、結果的には「スキャンダルの悪影響はほぼなかった」と結論づけることができるだろう。

 スキャンダルで露出が減ったままポジションを失うタレント、露出は減るものの時間の経過とともに気がつけば元にいたポジションに戻ってるタレント、ほとんど影響を受けないタレント。過去にいろんなケースがあったが、福山雅治のようにキャリアも長くファン層も分厚いタレントにとっては、あの程度のスキャンダルは痛くも痒くもないということか。そもそも、スキャンダル(の程度と内容にもよるが)でポジションを失うようなレベルのタレントの人気は、地上波のテレビを筆頭とするマスメディアによって作られたものであるということなのかもしれない。福山雅治の人気の高さとその支持の根強さは、そのレベルではなかった。

■公開情報
『ブラック・ショーマン』
全国公開中
出演:福山雅治、有村架純、成田凌、生田絵梨花、木村昴、森永悠希、秋山寛貴(ハナコ)、岡崎紗絵、犬飼貴丈、森崎ウィン、伊藤淳史、生瀬勝久、仲村トオル
原作:東野圭吾『ブラック・ショーマンと名もなき町の殺人』(光文社文庫刊)
監督:田中亮
脚本:橋本夏
音楽:佐藤直紀
配給:東宝
©2025「ブラック・ショーマン」製作委員会
公式サイト:https://blackshowman.jp
公式X(旧Twitter):@blackshowman_mv
公式Instagram:@blackshowman_mv

『今週の映画ランキング』(興行通信社):https://www.kogyotsushin.com/archives/weekend/

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