『ハンドメイズ・テイル』は現代社会の写し鏡 翻訳家・英文学者が最終章のみどころ明かす
『ハンドメイズ・テイル/侍女の物語』ファイナルシーズンについて
ANN DOWD
イベント終盤は『ハンドメイズ・テイル/侍女の物語』ファイナルシーズンについての話題となった。MCの白尾が、原作の『侍女の物語』がオープンエンドのような終わり方をしているのを受けて、その後の物語が描かれるファイナルシーズンについての感想を鴻巣と小川に伺った。
鴻巣は「映像を観てしまうと翻訳がうまくできなくなる」という裏話を明かしつつ、続編の『誓願』への橋渡し的役割を担うファイナルシーズンの物語を、「巨大な行間を読むような作業」だと評した。加えてアトウッドが2019年(『ハンドメイズ・テイル/侍女の物語』配信開始から2年後)になって続編を発表した動機について、ドラマへの反響から「現実がディストピアのフィクションに近づいてしまった」のを原作者自身痛感したからではないかと読み解いた。
オープンエンドの物語には続編を望む声が多く寄せられるものだが、必ずしも作者がそれに応えるとは限らない。実際アトウッドも40年近く続編を著すことはなかった。しかし『ハンドメイズ・テイル/侍女の物語』をきっかけにして、かつて自身が描いたフィクションがリアリティある問題として切実に受け止められているのを目にして、思うところは大いにあったのだろう。
終盤、参加者からの「本作のような“しんどい”物語を他人に薦めるにはどうすればいいか?」という質問に対して、小川は「しんどさの原因を探ってみては?」と回答。小川が本作の“敷居の高さ”は視点の複数性にあるとし、これを“多声性=polyphonic”の物語だと表現した。小川によれば「主人公≒一人称の視点で話が進む物語は、いずれ報われることが想像できるため観やすい」のだという。一方で視点の複数性は同時に正義の複数性を生み出し、なかなか一つの正義に収束しない、その“あわい”にこそしんどさと本作の魅力があるという。
関連して、「ドラマ版では男性キャラとの共闘が多く描かれるのも魅力」だと語り、今後のファイナルシーズンへの期待が高まるコメントを残した。
O-T FAGBENLE
ところで本イベントのサブタイトル「観てから読むか、読んでから観るか」は、今回の対談を踏まえて原作とドラマ版どちらに先に触れたいかを問うものだ。イベント終了時、会場へのアンケートが行われた際には、鴻巣と小川が原作版との関わりが深いこともあってか「読んでから観る」と答えた参加者が大多数だった。
とはいえどのような順番でこの“フィクション”に触れるにせよ、いま手に取るべき作品であることは間違いないだろう。
■配信情報
『ハンドメイズ・テイル/侍女の物語』ファイナルシーズン(シーズン6)
Huluにて見放題独占配信中(毎週金曜に1話ずつ配信)
シーズン1〜5全話見放題配信中
出演:エリザベス・モス、イヴォンヌ・ストラホフスキー、ブラッドリー・ウィットフォード、マックス・ミンゲラ、アン・ダウド、O・T・ファグベンル、サミラ・ワイリー、マデリーン・ブリューワー、アマンダ・ブルジェル、サム・ジェーガー、エヴァー・キャライン、ジョシュ・チャールズ
原作:マーガレット・アトウッド 『侍女の物語』(早川書房)
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