“汚い高音”を制した下野紘 大きなインパクト残した『鬼滅の刃 無限城編』善逸戦を深掘り

 公開1カ月で興収257億円を突破し、『アナと雪の女王』を超えて国内歴代興収4位になったことでも話題を集める『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』(以下、『無限城編 第一章』)。

 原作の力強さは言うまでもないが、アニメならではの映像美と演出。そして何より、声優陣の圧倒的な表現力が作品の魅力を押し上げている。

 童磨戦や猗窩座戦といった戦いが観客を惹きつける中、改めて注目したいのは、獪岳との戦いで大きなインパクトを残した善逸を演じる下野紘の芝居だ。

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 『竈門炭治郎 立志編』の初回放送から6年。『無限城編 第一章』では、無限城に落ちていく冒頭のアニメオリジナルシーンで、目を閉じ戦いへの覚悟を静かに固める善逸の姿がスクリーンに映し出される。序盤から多くの観客が「あの善逸が……!」と成長を感じたのではないだろうか。

 その変化を語るとき、やはり外せないのが善逸の“ヘタレ”な一面を象徴する「汚い高音」。「イヤァアアア~!!!」「ア゛~~ッ!!」と叫びながら鍛錬から逃れようとする善逸の姿は、シリーズを通してコミカルな魅力の中心だった。下野は、善逸のオーディションに、台本ではなくあえて原作を読んで臨んだという。もちろんオーディションのセリフにもこの汚い高音が含まれ、結果には「汚い高音選手権を制したのは下野紘」とまで書かれていたというのも、下野本人が『鬼滅ラヂヲ』で明かしている有名な話だ。

 アニメのキャスティングオーディションでは役の振れ幅を見るために、さまざまなトーンの“そのキャラらしさ”が出る特徴的なセリフが用意されることが多い。善逸にとってはそのコミカルさこそがキャラクターを語る上で重要な要素のひとつだったのだろう。

 だからこそ、今回の劇場版で描かれた“コミカルではない”善逸の姿は、その振れ幅の大きさを改めて実感させてくれるのではないだろうか。

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