『クレヨンしんちゃん』がインドで大人気 激変するインドアニメ市場成功の秘訣とは?

インド市場における日本アニメの存在感

 インドにおいてアニメというのは、子どもが観るものというイメージが強く、日常コメディやカートゥーン・ネットワーク系のわかりやすい作品が愛されてきた。そのためスタジオジブリ作品のように、大人もターゲットとして組み込まれている、入り組んだ内容の作品は劇場公開されていないものも多いし、いざ国内でアニメを制作するにしても外注頼みというスタンスが、インドのアニメ産業、市場が大きく発展しなかった要因だ。

 しかし近年は、それが超激変している。2010年代後半からデジタル化、配信サービスの普及によって変わってきたものの、やはり新型コロナの影響が大きいといえる。

 新型コロナウイルスのパンデミックによって、ボリウッドやトリウッドなどの大作映画が軒並み延期、劇場公開を断念して配信スルーに切り替わっていくなかで、空いてしまった枠をハリウッド作品やアニメ映画で埋めるようになったことが、今のアニメ映画市場の確立に繋がった。

 首都圏の一部上映・英語字幕、もしくはヒンディー語吹き替えという観客が限定されるスタイルで、地方で観るのが難しいとはいえ、定期的に新作が上映されており、『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』や『チェンソーマン レゼ篇』といった作品の公開も控えている。

 それに加え、NetflixやDisney+Hotstarなどがアニメの配信数を増加させ、さらに2023年にはエイベックス・ピクチャーズや講談社、集英社といった出版社やアニメ会社が連携してダイレクトに新作を放送するプラットフォーム「アニメタイムズ」が設立されたことで拍車がかかった。

 同じく2023年に株式会社ポケモンも「インドマーケティング室」を設置し、“本格的”にインド参入を開始。もともとアニメは放送されていたが、ゲームやグッズ、イベント展開なども積極的に行っていくようで、実際に2025年にはムンバイで「Pokémon Carnival and Run」といった大規模イベントや大手食品メーカーとのコラボ、インドヒップホップ界の帝王バードシャーによるラップソング「Imma Be Your Pokémon」などもリリースされるなど、急速に存在感を示しつつある。

Imma Be Your Pokémon (Official Music Video) - Badshah | Sharvi Yadav ft. Sahher Bambba

 2011年から始まった「Comic Con India」も、当初はハリウッドやアメコミの展示物が主流だったのが、今ではジャンプ系作品の展示物が目立つようになってきており、アニメに対する認識は数年前では信じられないほどに激変。様々な日本のエンタメ企業がインド市場を開拓しようと常に動いている状態だ。

 そんな日本アニメに感化されたクリエイターたちがインドで日本のアニメ風作品を制作するために、アニメ製作スタジオが各地で設立されている。ここにきて、全く発展してこなかったアニメ産業が進み出している。まだまだ粗削りな部分が多いものの、あと2、3年もすれば、インドのアニメが世界をザワつかせるかもしれない。

 ……というのは、近年のアニメ市場の変化であるが、『クレヨンしんちゃん』の場合は別格である。配信サービスというものが、まだ存在していなかった時代からインドで人気を博した作品なのだ。

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