『しあわせな結婚』愛と執着は紙一重? 杉野遥亮演じる刑事・黒川の複雑な心情を読み解く
物語の進行とともに、黒川は単なる捜査役を超え、ネルラと過去との心理的な対峙を象徴する存在となりつつある。一方で、黒川から強い視線を向けられているネルラのほうは、はたして彼をどう思っているのだろうか。
何としても15年前の真実を暴き出そうとする黒川。彼の事件に対する執着、そして自分に向ける思いの強さを知っても、ネルラはしごく冷静だった。顔色ひとつ変えないまま、ただ淡々と言葉の意味を確かめるような調子でこう返したのだ。「15年前からずっと忘れられなかったのね。私のことが」。黒川が肯定すると、ネルラはすかさず「(私のことが)好きなの? だからいたぶりたいの?」と畳みかける。その様はそう、まさに容疑者を尋問する刑事のように。
ネルラにはこんなふうに自らの感情を微塵も見せないまま、逆に相手の心の奥底を試すような一面がある。彼女が黒川に対しこれほど好戦的な表情を見せるのは、深く根を張った疑念と胸の痛みを断ち切るためには、まずは目の前に立ちはだかる黒川と対峙するほかないことを心のどこかで理解しているために違いない。何といってもネルラにとって黒川は、あの忌まわしい事件現場の惨状を共有できる人間のひとりなのだ。彼だけが知る断片、彼だけが見た光景――それらを抜きにしては、彼女の物語は決して完結しない。
一方、黒川に「(ネルラと)別れるんですか」と問われ、「別れたくない!」と即答した幸太郎の揺るがぬ思いも、今後の見どころのひとつだろう。第5話の予告編では、幸太郎が黒川に対し「妻とあなたは、刑事と被疑者なだけですか?」と問いかける一幕も。殺人容疑をかけられた女性と、彼女を守ろうとする弁護士の夫、そしてその真相を追い求める刑事。三者が織りなす関係は、単なる愛憎劇とは異なる複雑さや危うさを孕んでいる。物語の後半では三者の関係の変化と、その奥に潜む感情の正体にさらに踏み込む展開が期待できそうだ。
大石静が脚本を手がける、夫婦の愛を問う“完全オリジナルホームドラマ”であり、令和の“マリッジ・サスペンス”。主演を務める阿部サダヲと松たか子は、10年ぶりに夫婦役を演じる。
■放送情報
木曜ドラマ『しあわせな結婚』
テレビ朝日系にて、毎週木曜21:00~21:54放送
出演:阿部サダヲ、松たか子、板垣李光人、段田安則、岡部たかし、玉置玲央、金田哲、馬場徹、辻凪子、堀内敬子、小松和重、杉野遥亮
脚本:大石静
監督:黒崎博、星野和成、楢木野礼
ゼネラルプロデューサー:中川慎子(テレビ朝日)
プロデューサー:田中真由子(テレビ朝日)、山形亮介(テレビ朝日)、森田美桜(AOI Pro.)、大古場栄一(AOI Pro.)
音楽:世武裕子
主題歌:Oasis「Don’t Look Back In Anger」(Sony Music Labels Inc.)
制作協力:AOI Pro.
制作著作:テレビ朝日
©テレビ朝日
公式サイト:https://www.tv-asahi.co.jp/shiawasena-kekkon/
公式X(旧Twitter):https://x.com/wasekon_tvasahi
公式Instagram:https://www.instagram.com/wasekon_tvasahi/
公式TikTok:https://www.tiktok.com/@wasekon_tvasahi