『明日はもっと、いい日になる』が描く外国人居住者の困難 “社会の分断”の歯止めへの願い

 奇しくも先月行われた参議院選では外国人をめぐる政策が争点に上がったばかり。なかには、非正規滞在を含めた外国人の違法だけをことさら取り上げ、その取り締まりの強化を公約に掲げる政党もあった。それによって巻き起こった外国人ヘイト。彼らは法を犯し、日本社会の秩序を乱す外国人は強制送還して然るべきと主張する。しかし、外国人による犯罪の背景を紐解いていくと、むしろ日本社会のあり方が原因であることも多いのだ。

 リンは確かに日本の法に背いたが、そこには様々な理由がある。一つは、日本人の夫が自分の過失で離婚したにもかかわらず、養育費の支払いを滞り、リンたち親子を経済的貧困に追い込んだこと。

 そしてもう一つは、偏見や差別が招いた社会的孤立だ。リンは行政手続きなどで困った時に、周りに頼れる人が誰もいなかった。けれど、自ら社会との繋がりを避けてきたわけではない。蜂村(風間俊介)と信子(小林きな子)が、リンたちがかつて暮らしたマンションに訪れた際、近隣住民が親子のことを「マンションのルールも守らない」「子どもを夜に一人で遊ばせていた」と噂していたが、それは忙しく働くリンに代わって幼い愁がゴミ出しなどを手伝っていたからであり、夜中に一人で外に出ていたのもリンが仕事から帰ってくるのを待っていたから。そういう事情に近隣住民が思いを巡らせられなかったのは、外国人やシングルマザーに対する偏見があったからかもしれない。もし夫が養育費をきちんと支払っていたら、あるいは周りが手を差し伸べていたとしたら、また違った結果があったのではないだろうか。

 厳しい状況の中でもリンは母親として愁を立派に育てるため日々懸命に働き、愁もまた幼いながらにリンを支え、親子は二人三脚で必死に生きてきた。リンを迎えにきた入管職員の小坂(笠原秀幸)は「この街を守る使命がある」と訴える。だが、その守るべき対象にはリンたち親子も含まれているはずだ。大好きな母親と暮らしたいという当たり前の願いを持つ愁の笑顔と未来を守るため、一致団結して小坂に働きかけた翼たち。その思いは届き、今回は書類の申請遅延で処理され、リンには在留の特別許可が下りることになった。性別や年齢、国籍などにかかわらず、誰もが「明日はもっと、いい日になる」と思える日々を送れますように。本作には、そんな社会の分断に歯止めをかける願いが込められているのだと改めて感じたエピソードだった。

明日はもっと、いい日になる

児童相談所を舞台に、そこで働く個性的な面々たちがこどもたちの純粋な思いに胸を打たれ、その親までも救っていく姿描く完全オリジナルストーリーのヒューマンドラマ。

■放送情報
『明日はもっと、いい日になる』
フジテレビ系にて、毎週月曜21:00~21:54放送
出演:福原遥、林遣都、生田絵梨花、小林きな子、濱尾ノリタカ、莉子、西山潤、町田悠宇、勝村政信、風間俊介、柳葉敏郎ほか
脚本:谷碧仁(劇団時間制作)ほか
演出:相沢秀幸、下畠優太、保坂昭一
プロデュース:宮﨑暖
主題歌:JUJU「小さな歌」(ソニー・ミュージックレーベルズ)
制作プロデュース:熊谷理恵、三浦和佳奈
制作協力:大映テレビ
制作著作:フジテレビ
©︎フジテレビ
公式サイト:https://www.fujitv.co.jp/ashitawamotto/
公式X(旧Twitter)@ashitawa_motto
公式Instagram:@ashitawa_motto
公式TikTok:@ashitawa_motto

関連記事