『ウェンズデー』の魅力をおさらい ティム・バートンの美学に彩られた世界観を紐解く
本作の根底に流れているのは、孤独や異質さ、そして“普通”という枠からはみ出した者たちが、少しずつ自分の居場所を見つけていくというテーマだ。そうした物語を、ゴシックな世界観の中で丁寧に描いていくのは、ティム・バートンが長年得意としてきた語り口でもある。
ネヴァーモア学園の生徒たちとの交流を通して、ウェンズデー自身にも、ほんのわずかな心の変化が芽生えていく。とりわけ印象的なのが、彼女とルームメイトであるイーニッド・シンクレアとの関係性だ。黒一色のウェンズデーと、パステルカラーをこよなく愛する人狼のイーニッド。性格も価値観も真逆な2人の友情は、まるで『ウィキッド ふたりの魔女』(2025年)のグリンダとエルファバのような鮮やかな対比を見せながら、少しずつ深まっていく。
そして何より、ウェンズデーというキャラクターそのものが圧倒的に魅力的だ。誰にも媚びず、皮肉とブラックユーモアを武器にしながらも、驚くほど多才で、意外にも強い正義感を秘めている。成績優秀で語学堪能、運動神経も抜群。小説を書けばチェロを奏で、いざとなれば肉弾戦も辞さない。ウェンズデーは、どこを切っても最強であり、どこまでも孤高な存在なのだ。
そんな彼女が、シーズン2では“人気者”の立場に置かれるという、なんとも皮肉な展開が待ち受けている。予告編では、生徒たちからサインを求められ困惑する姿が描かれていた。「私は血で書く」「自分の血とは言ってない」といったセリフには、相変わらずの毒気たっぷりすぎるブラックユーモアが凝縮されており、思わずニヤリとした人も多いのではないだろうか。
個人的に楽しみにしているのが、ウェンズデーの衣装だ。カヌー競技「ポーカップ」での黒の猫耳スタイル、ダンスパーティで着用したチュールたっぷりのブラックドレス、ストライプのジャケットが印象的な制服、大きな白襟が映えるドット柄のワンピース……いずれも白と黒を基調としたコーディネートは、どれも1枚の絵のように美しく、目を奪われる。ウェンズデーの無表情と限られた色彩が、かえって世界の彩度を引き立てているのも印象的だ。シーズン2でも、どんな“眼福ルック”が登場するのか、今から楽しみでならない。
『ウェンズデー』シーズン2は、ティム・バートン作品のファンにとっても、学園ドラマやミステリーが好きな人にとっても、ますます見逃せない存在となるだろう。癖の強さも、孤独も、皮肉さえも愛おしく思えてしまう。そんなウェンズデーのいる世界に、帰ってこられる日がついにやってくる。
参照
※ https://www.vogue.co.jp/lifestyle/article/teenvogue-netflix-wednesday-easter-eggs-and-hidden-addams-family-references
■配信情報
Netflixシリーズ『ウェンズデー』
シーズン2 パート1:8月6日(水)、パート2:9月3日(水)より世界独占配信