『東京ラブストーリー』から『片思い世界』まで 成馬零一『坂元裕二論 未来に生きる私たちへの手紙』刊行へ

 ドラマ評論家・成馬零一による新刊『坂元裕二論 未来に生きる私たちへの手紙』が、2025年9月2日に株式会社blueprintより刊行される。

 1990年代には『東京ラブストーリー』(フジテレビ系)でトレンディドラマの旗手として一世を風靡し、2010年代に入ると『Mother』(日本テレビ系)、『それでも、生きていく』(フジテレビ系)、『最高の離婚』(フジテレビ系)、『Woman』(日本テレビ系)、『問題のあるレストラン』(フジテレビ系)、『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』(フジテレビ系)、『カルテット』(TBS系)、『anone』(日本テレビ系)といった傑作ドラマの数々を手がけ、2020年代からは『花束みたいな恋をした』や『怪物』などの映画作品で、いまや世界的にも注目を集めている脚本家・坂元裕二。その唯一無二の作家性はいかにして培われたのか? そして意味深な作品群に込められたメッセージとは? 

 気鋭のドラマ評論家・成馬零一が、難攻不落の坂元裕二の作品群と真正面から向き合い、ときに戸惑い、ときに心身を摩耗し、ときに感嘆しながら、そこに込められた問題意識や時代背景を徹底的に論じ尽くした本格評論集。坂元裕二を「テレビドラマや映画の脚本を通して、理解の及ばない他者と向き合い、届くかどうかわからない手紙を書き続けてきた脚本家」と評する本書は、坂元裕二作品を深く読み解くためのガイドブックとしてはもちろん、平成〜令和の社会・文化論としても示唆に富んだ一冊だ。

 おそらく筆者は、他のドラマについて書く時の何倍も喧嘩腰で、坂元裕二作品に対しては挑んでいる。今回の論考も包帯が巻かれているところを狙って繰り返し蹴るようないやらしい詰め方をしている場面がいくつかあり、そんな書き方しなくてもいいのにと自分でも思うのだが、そこで手を抜くのは逆に不誠実だという思いが勝ってしまい、結局こういう言い方しかできなかったなぁと自分の未熟さに恥ずかしくなる。

 なんというか、会うと必ず喧嘩になる友達と喋っている時のイライラする感じが坂元裕二作品には存在する。会うくらいだから嫌いではないし、むしろ好きだったりするのだが、考え方の一つ一つに微妙なズレがあり、そこでいつも衝突し、喧嘩別れをするものの、ほとぼりが冷めると、また会ってしまう。

「唐揚げにレモンをかけるかかけないか?」みたいな話だけをしていれば気軽に付き合えるのに、どうしても心の奥底を知りたくなって踏み込んだ話をした結果、大喧嘩となり、こっちもボロボロになる。坂元裕二作品について言及する時はいつもそんな感じで、だから凄く疲れる。(『坂元裕二論 未来に生きる私たちへの手紙』「まえがき」より)

 なお、版元の株式会社blueprintの直販サイト「blueprint book store」では、本書の刊行記念トークショーの配信チケット付き書籍を販売予定だ。刊行記念トークショーの詳細は後日発表する。

■書籍情報
『坂元裕二論 未来に生きる私たちへの手紙』
著者:成馬零一
発売日:9月2日(火)
価格:2,750円(税込)
判型:ソフトカバー/四六判
頁数:240頁
ISBN:978-4-909852-61-8
出版社:株式会社blueprint
blueprint book store:https://blueprintbookstore.com/items/689054fb3ee3fdd97c2a8fe0

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