『鬼滅の刃 無限城編』で発揮された石田彰の真価 猗窩座の過去編に込められた悲哀と人間性

 明らかになった過去によって、猗窩座に“人間臭さ”が生まれた。今では鬼となった猗窩座にも、過去には守りたい人がいて、恋をしたり涙を流したりする人間だったのだ。心の中で猗窩座と狛治が葛藤しせめぎ合う姿も、石田は胸が苦しくなるような芝居で表現している。

 恋雪と初めて出会ったシーンを回想する猗窩座は、「くだらない過去」と一度冷たく吐き捨てる。しかし、その後に続く「くだらない……」というセリフの演技には、絶妙な“揺らぎ”があった。くだらないと切り捨てるには、恋雪たちとともに過ごした日々は猗窩座の中で大事すぎる思い出だったのだ。猗窩座が見せた“葛藤”と“揺らぎ”もまた、彼の人間臭さに繋がっている。

 石田が務めるキャラクターは、ミステリアスな雰囲気が印象的だ。『エヴァンゲリオン』シリーズでは渚カヲル役を務め、碇シンジのことを一番に考え思いやりつつも、真意が掴めない謎めいた少年を演じきった。また、『来世は他人がいい』では深山霧島役を担当し、一見すると好青年だが、実は冷酷で危うい男を表現している。

『来世は他人がいい』『エヴァ』『ガンダム』など 石田彰はミステリアスな役ほどハマる!

TVアニメ『来世は他人がいい』がとにかく面白い。こんな直球の表現を冒頭から投げつけられるのは、少々ためらわれるかもしれないが、作…

 ミステリアスなキャラクターの特徴は、なにを考えているのかわからないところに、妙に惹かれてしまうという魔性の魅力だ。猗窩座もミステリアスな雰囲気をまとっているが、彼のバックボーンを知ると、印象は大きく変わる。狛治が泣きながら恋雪に「許してくれ」と謝るシーンで、石田は猗窩座がつけた“仮面”をそっと取った。そして、猗窩座という孤高のキャラクターを、私たちのそばに引き寄せてくれたように思う。

 石田の不敵な芝居は、猗窩座に強者の風格を生み出した。一方で、過去を思い出した猗窩座の葛藤には、人間味がある。『無限城編 第一章』は、猗窩座の独白によって、“ミステリアス”を脱ぎ捨てた石田が堪能できる作品だ。

■公開情報
『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』
全国公開中
キャスト:花江夏樹(竈門炭治郎役)、鬼頭明里(竈門禰󠄀豆子役)、下野紘(我妻善逸役)、松岡禎丞(嘴平伊之助役)、上田麗奈(栗花落カナヲ役)、岡本信彦(不死川玄弥役)、櫻井孝宏(冨岡義勇役)、小西克幸(宇髄天元役)、河西健吾(時透無一郎役)、早見沙織(胡蝶しのぶ役)、花澤香菜(甘露寺蜜璃役)、鈴村健一(伊黒小芭内役)、関智一(不死川実弥役)、杉田智和(悲鳴嶼行冥役)、石田彰(猗窩座役)
原作:吾峠呼世晴(集英社ジャンプ コミックス刊)
監督:外崎春雄
キャラクターデザイン・総作画監督:松島晃
脚本制作:ufotable
サブキャラクターデザイン:佐藤美幸、梶山庸子、菊池美花
プロップデザイン:小山将治
美術監督:矢中勝、樺澤侑里
美術監修:衛藤功二
撮影監督:寺尾優一
3D監督:西脇一樹
色彩設計:大前祐子
編集:神野学
音楽:梶浦由記、椎名豪
主題歌:Aimer「太陽が昇らない世界」(SACRA MUSIC / Sony Music Labels Inc.)・LiSA「残酷な夜に輝け」 (SACRA MUSIC / Sony Music Labels Inc.)
総監督:近藤光
アニメーション制作:ufotable
配給:東宝・アニプレックス
©︎吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable
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公式サイト:https://kimetsu.com/anime/mugenjyohen_movie/
公式X(旧Twitter):@kimetsu_off

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