『KPOPガールズ!デーモン・ハンターズ』の恐るべき中毒性 全力の感情表現が愛おしい

 とはいえ、変顔だけが『KPOPガールズ!デーモン・ハンターズ』ではない。歌声の力でデーモンを封じる結界「ホンムーン」を作り出すハントリックスの対抗策として生み出されたのがデーモンの男性アイドルグループ「サジャ・ボーイズ」だ。サジャ・ボーイズはリードボーカルのジヌ以外物語性を与えられておらず、人の魂を奪う文句なしのデーモンだが、そんなことが全く気にならないほど色気がすごい。サジャ・ボーイズのパフォーマンスに「ヒーン!」となっている男性がいたが、筆者もまったく同じ顔をしていた。『KPOPガールズ!デーモン・ハンターズ』はアニメーション映画として視覚に訴えかける作品だが、ハリウッドの大手制作スタジオの作品でここまで東アジア人から見た東アジア人の色気を引き出すことに成功した作品はそれほど多くないと思う。

 そもそも『KPOPガールズ!デーモン・ハンターズ』は全編韓国を舞台にしており、キャストもほぼ韓国系で配役されている。西洋人の観客の感情移入を促すためのわざとらしい白人キャラクターもいない。道行く人は多様なアジア人像に溢れている。この作品がちゃんとNetflixでヒットを記録し、米国Spotifyチャートで1位に輝いたのは今の時代において重要な出来事のように思う。

 非常に個性的な傑作である『KPOPガールズ!デーモン・ハンターズ』はミュージカルとアクションを交差させた冒頭から心を掴んでくる。躍動感あふれるアクションは的確なカメラワークとカット割りによって成立するが、そこにミュージカルの要素を加えることで現実から飛翔するような高揚感をもたらす。特に墜落する飛行機から自由落下しながらデーモンをシバきつつメイクを決めるシーンは、カッコよさのあまり上記で言うところの「ヒーン!」という表情になった。

 スタイリッシュなアクション、印象的なアートワーク、キャッチーな音楽。どれをとっても『KPOPガールズ!デーモン・ハンターズ』はソニー・ピクチャーズ アニメーションの誇る傑作だ。シナリオ面では99分という尺の都合かやや描写が足りない部分はあるものの、歌と踊りで戦う作品においてこれ以上ないカタルシスが待ち構えている。個人的意見だが、アイドルものの強みは音楽を通じてそのキャラクターが本当に存在するように感じられ、実際に応援したくなるところだと思う。その点においても『KPOPガールズ!デーモン・ハンターズ』は素晴らしい作品だ。ハントリックスもサジャ・ボーイズもたまらなく愛らしい。というわけであなたも『KPOPガールズ!デーモン・ハンターズ』を観て「Soda Pop」を再生する手を止められない生活を過ごしてみるのはいかがだろうか?

■配信情報
『KPOPガールズ!デーモン・ハンターズ』
Netflixにて独占配信中
出演:アーデン・チョー、アン・ヒョソプ、ケン・チョン、イ・ビョンホン、ダニエル・デイ・キム、メイ・ホン、ユ・ジヨン、キム・ユンジン、ジョエル・キム・ブースター、ライザ・コーシー
監督:マギー・カン、クリス・アペルハンス
脚本:デイナ・ヒメネス、ハンナ・マクメチャン、マギー・カン、クリス・アペルハンス

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