夢を追う“メイコ”原菜乃華が示した覚悟 『あんぱん』が照らし出す朝田家の温かな絆

 戦争が終わり、メイコ(原菜乃華)の心の中に小さな夢が灯り始める。NHK連続テレビ小説『あんぱん』第69話では、夢を追いかけるメイコの決意が描かれ、そんなメイコを支えようとする家族の思いと、その背中をそっと押すのぶ(今田美桜)の姿があたたかく映し出された。

 戦争が終わり、暮らしはまだまだ厳しい。それでも人々の心の奥底には、「自分の夢をもう一度」という小さな火種が、静かに灯り始めている。メイコがラジオの『のど自慢』に出場するため、東京へ行きたいと蘭子(河合優実)に打ち明けるが、その夢を偶然耳にしたくら(浅田美代子)の存在が、今回の小さな“家出劇”を思いがけず大きく動かすきっかけとなった。噂はすぐに朝田家に広がり、家族は一斉に反対する。しかし、メイコの決意は揺るがない。彼女は家を飛び出し、自分の足で、静かに新しい一歩を踏み出した。

 一方、のぶの物語もささやかに動いていく。夕刊廃止の知らせで肩を落としていたのぶのもとに、東海林(津田健次郎)が新しい提案を携えて現れる。夕刊の代わりに月刊誌を任せてもらえることになったのだ。しかし、目の前の仕事のことより、のぶの頭の中にあるのはメイコのことだった。東海林の「家族のもとへ行け」という言葉に背中を押され、のぶはメイコを探しに向かう。

 そして迎えた夕暮れ時、のぶとメイコはようやく再会を果たす。東京へ向かうはずだったメイコが降り立ったのは、のぶがいる高知の駅だった。背中を押していたのは、かつて自分も同じ夢を見たくらの思いだったことが明かされる。夢を見ることの苦さと温かさが、世代を越えてそっと繋がっていく。夢を諦めかけていた若い頃の自分を、くらはメイコに重ねていたのだろう。だからこそ、反対する家族とは裏腹に、こっそりと旅費を渡したのだ。メイコもまた、その思いに応えるように、自分の意思で汽車を降り立った。

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