『めおと日和』“瀧昌さま”だけじゃない! 本田響矢の“振り幅”を堪能できる必見作5選

『ジャックフロスト』

本田響矢×鈴木康介W主演「ジャックフロスト」30秒予告

 『ジャックフロスト』(MBS)は、本田にとって初のBL作品であり、主演としての存在感を決定づけた1作でもある。彼が演じたのは、事故で恋人との記憶だけを失ったイラストレーター・奥沢律。恋人は目の前にいるのに、記憶がない。知らないはずなのに、心が揺れる。その曖昧で、壊れやすい感情の動きを、本田は驚くほど繊細に演じ切っている。瀧昌の沈黙というのは、堅実さや不器用さに由来するものであったが、本作の律の沈黙は失ったものへの戸惑いや孤独に根ざしている。どちらも寡黙ではあるが、その背景にあるものはまったく異なるのだ。律の静けさは、空白となった記憶を前にしたときの無防備さであり、自分でも正体のわからない感情に怯えながら、それでも確かに何かを感じてしまう。本田はその揺らぎを、言葉ではなく微細なまなざしや間で表現していく。そんな本田の静かな芝居が極まった1作である。

『私と夫と夫の彼氏』

「私と夫と夫の彼氏」120秒予告|Paraviで独占先行配信!

 『私と夫と夫の彼氏』(テレ東)での本田は、最も挑戦的な役柄だった。彼が演じた伊奈周平は、なんと妻とその夫である男性の両方を愛する青年。つまり、ポリアモリーという新たな関係性を描く作品である。

 こうした物語はセンセーショナルな設定に見えるが、本田の演技があることで決して突飛なものにはならない。周平という人物が愛に迷い、悩み、でも真っ直ぐに向き合おうとする姿に、愛の誠実さと多様性へのまなざしがにじんでいた。「愛とは何か?」を問い直すこの作品で、本田はまた新たな顔を見せてくれている。そして、その愛に向き合う姿勢は、瀧昌さまとまっすぐに向き合った私たちに、そっと語りかけてくれるようでもある。

 瀧昌さまという人物との出会いが俳優・本田響矢という表現者の沼を知るきっかけになったとしたら、なんと素敵なことだろうか。恋も、友情も、葛藤も、狂気も、さまざまな人間を生き、丁寧に紡ぎ続けてきた彼の演技には、まだまだ出会っていない感情がある。

 “瀧昌さまロス”をきっかけに生まれた喪失感は、裏を返せば、それだけ彼が演じた人物が私たちの中に根づいていたという証だ。次に本田がどんな人間を演じ、どんな感情を届けてくれるのか。その出会いを楽しみに待っていたいと思う。

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