ミジとホスの“初めてのお泊まり”にドキドキ 『未知のソウル』が提示する“居場所”の在り処

 Netflixで配信中の『未知のソウル』が現在話題となっているが、物語はいよいよクライマックス目前を迎えた。本作は、主演を演じるパク・ボヨンが、見た目はそっくりで中身が正反対の双子を演じ、“1人4役”の名演が絶賛されているだけでなく、ドラマの内容が現代人の心に刺さると多くの人の共感を呼んでいる。本稿では第9話から第10話を中心にご紹介したい。(以下、ネタバレを含みます)

 パク・ボヨン演じる双子のユ・ミレとユ・ミジは、ミレが会社で行き詰まったことをきっかけに入れ替わりの人生を過ごすことにする。ミレとミジは、入れ替わった状態で、それぞれ弁護士のイ・ホス(パク・ジニョン)と、農場経営者のハン・セジン(リュ・ギョンス)との関係を深めていく。

 ミレが勤める韓国金融管理公社では、最近のミレの変化を訝しみ、双子が入れ替わったのではないかとミレを試すことにする。前回はミジとミレが入れ替わった場面がないままで、続くとなっていたのでヤキモキさせられたが、ここは危機一髪のところで2人の入れ替わりが終了していて指紋認証もバッチリ&スッキリの“サイダー展開”となった。

 ミレは、公社のデータアナリストであるテイ(ホン・ソンウォン)が、内部告発の末に退職した先輩スヨン(パク・イェヨン)の弟だと知り驚く。さらにミレは、テイから公社の不正の証拠を渡され、告発するように促される。断るミレに、テイはスヨンに会いに家に来るように伝える。

 一方、ミジは、テイを家に上げていたことでミレと喧嘩をしてしまい、ホスの家に泊めてもらうことになる。ミレとの入れ替わりが終了したことで、田舎に帰ろうとするミジを「ここにいろ」と引き留め、ミレの「泊ってもいいの?」という言葉に「ダメなの?」と答えるホス。戸惑い焦るミジを尻目にホスは、余裕綽々の態度を見せるが、実はホスもソワソワしていたことが判明する。ドギマギしながらシャワーから出たミジは、ホスと優しくキスを交わすが、「家に転がり込んでだらしない?」「(キスの最中は)いつまで息を止めるの?」と雑念に駆られていた。そのミジの言葉を聞いたホスは、「僕が泊まれと言って君が無理してるかも」「半袖だと見苦しいから何か羽織ろうか」と考えていたことを打ち明ける。長い両片思いが叶い、晴れて付き合いだしたばかりのかわいいカップルに不意に降ってわいた“初めてのお泊り”。互いにソワソワし、ドギマギする様子が微笑ましくてほのぼのする。

 ミジとホスのほのぼのとした場面とは裏腹に、ミジが公社の仕事で担当していたキム・ロサ(ウォン・ミギョン)には、危機が訪れる。土地を売らないと言い張るロサに、公社から圧をかけられた弁護士イ・チュング(イム・チョルス)は、ロサの正体がロサの友人ヒョン・サンウォルであることをマスコミに流したのだ。ミジとホスは、サンウォルの元を訪れ、彼女から本物のロサ(パク・ファニ)との経緯を聞かされる。

 本作は、双子のミジとミレの入れ替わりを軸に、登場人物たちが“居場所”を探す物語だ。“居場所”というのは、物理的な「場所」だけではなく、心や存在が「受け入れられている」と感じられる空間や関係性や拠り所のこと。体が弱く、勉強することで自分の居場所を作ろうしたが、不正を見過ごせず公社で居場所のないミレ。ソウルに行き成功したミレ(ミジにはそう見えていた)と違って、陸上選手の夢が破れ田舎で無職として過ごし、何者にもなれずにいたミジ。障害を負いながらも活躍する弁護士に憧れ、後を追い事務所に入るも、潔癖さゆえグレーを受け入れられないホス。金融業界で成功しながらも、田舎に残した祖父を死に至らしめてしまった罪悪感から農業経営を継ごうとするセジン。ミジとミレの母であるオッキ(チャン・ヨンナム)は、母ウォルスン(チャ・ミギョン)から愛されたことがないと感じて生きてきた。同じく生家から愛を受けずに育ったホスの育ての母ブノン(キム・ソニョン)。ミジとミレには優しいが、娘の心を傷つけてしまったウォルスン。登場人物たちの誰もが、“居場所”がないと思って生きてきたのだ。

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