『最後から二番目の恋』最終回の多幸感を反芻したい 千明が“老い”とともに歩いた人生
一方で、本作は老いの切なさも描いている。千明は憧れていた先輩から退職金を狙った詐欺を仕掛けられ、ショックを受けたことも。ただ、千明の場合は敏腕プロデューサーとして責任ある立場を任され、後輩からも慕われており、羨ましいと感じる人のほうが多いのではないだろうか。そんな人たちが共感するのはおそらく、千明の周りの女性たちだろう。啓子はキャリアの限界を自覚して会社を辞める決断をし、祥子は誤爆メッセージをきっかけに同僚から“老害”扱いされていることを知る。特に少子高齢化が急速に進む現代は年長者への風当たりが強いため、2人の置かれた状況がよりリアルに感じられるのかもしれない。
また、個人的に刺さったのが「本当のアタシって何にもないんだなぁって」という典子の台詞だ。筆者は2025年で30歳という一つの節目を迎え、なにかと周りの友人と自分を比べては“何者にもなれなかった”虚しさをよく感じている。その度に「いつかこの思いから解放される時が来るんだろうか」と思っていたが、典子の台詞で一生付き合っていく感情であることを知った。そんな典子が悩み苦しみながらも、58歳にしてグラビア撮影やエッセイの執筆など次々と新しいことに挑戦していく姿に勇気をもらえたのは言うまでもない。挙句には荒野への旅から帰ってきた広行とキッチンカーを始めるなんて、どこまでファンキーなんだ。浜崎あゆみが手がけた主題歌「mimosa」の歌詞にもあるように、このドラマのおかげで大人になったからって全てがうまくいくわけじゃないと知れたから、これからも歩いていける気がした。
まさにグランドフィナーレに相応しい多幸感溢れる展開が描かれた最終回。一方で、「何十年後かにまた続きが描かれるかもしれない」と思わせたのが、千明と和平の会話だ。今作から登場した成瀬(三浦友和)や律子(石田ひかり)との出会いをきっかけにお互いへの思いを再確認し、籍を入れるという選択肢もあった。しかし、2人はお互いが大切だからこそ、今のままの関係でいることを選ぶ。その上で「いつか心がとけて怖さが薄くなったら一緒に暮らしましょう。起きたとき、すっぴんのあなたがいる暮らしがしてみたい」と千明に改めてプロポーズをした和平。ファーストシーズンから“未来に恋する”ことの素晴らしさを描いてきた本作らしい決着のつけ方だった。未来は誰にもわからない。飯島直子がインタビューで「もしかしたら、“続・続・続”があるかもしれないですしね。人間の気持ちなんて変わるから」と語っているように(※2)、いつか岡田がこの物語の続きを描きたくなる日がくる可能性もある。そんな未来に恋しながら、自分の目の前にある坂をひたすら登っていきたい。
参照
※1. https://gendai.media/articles/-/153675?imp=0
※2. https://goetheweb.jp/person/article/20250620-naoko-iijima-1
鎌倉を舞台に、テレビ局プロデューサーの主人公と、市役所で働く公務員の恋を描いたロマンチック&ホームコメディ。2012年1月に第1期の連続ドラマ、同年11月にスペシャル版、2014年に第2期が放送され、本作はその続編となる。
■配信情報
『続・続・最後から二番目の恋』
TVer、FODにて配信中
出演:小泉今日子、中井貴一、坂口憲二、内田有紀、飯島直子、久保田磨希、松尾諭、佐津川愛美、白本彩奈、広山詞葉、美保純、柴田理恵、浅野和之、渡辺真起子、森口博子、石田ひかり、三浦友和ほか
脚本:岡田惠和
プロデュース:若松央樹(フジテレビ)、浅野澄美、郷田悠(FCC)
演出:楢木野礼、高橋由妃、西岡和宏(フジテレビ)
主題歌:浜崎あゆみ「mimosa」(avex trax)
制作協力:FCC
制作著作:フジテレビ
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