『あんぱん』北村匠海×中沢元紀、圧巻の2人芝居 「愛する人のために生きたい」痛切な願い
千尋のことは、何もかも分かっているつもりだった。けれど、目の前にいる弟は、気づけば想像よりもずっと遠くへ行ってしまっていた。自分の知らない場所で、想像できないほどの覚悟を固めていたのだ。「馬鹿なことは、するなよ」――嵩の言葉に静かにうなずくかと思われた千尋の口から返ってきたのは、「もう一度、シーソーに乗りたい」という言葉。唐突で、どこか幼さを残す一言だった。かつて3人で遊んだ御免与町の空き地。嵩、千尋、そしてのぶ(今田美桜)。千尋にとって、のぶはずっと心の中にいる愛しい人だった。本当は嵩が想いを伝えてくれていたら、千尋ものぶを諦められたかもしれない。だが、それができなかったからこそ、千尋は「生きて帰ってきたら、のぶに想いを伝える」と決意を口にする。
「愛する人のために、生きたい」と涙を浮かべながらそう語る千尋。その言葉に、嵩は何も言えず、ただそっと千尋を抱きしめることしかできなかった。その姿は、戦争という巨大な不条理のなかで、それでも自分の意思を貫こうとする人間の、静かな抵抗のようにも映った。
第11週「軍隊は大きらい、だけど」では、いよいよ戦地に赴く千尋と、すでに前線に立つ嵩の物語が交錯していく。戦争はすべてを変えてしまう。だがそのなかでも、守りたいもののために、生きようと願う人がいる。だからこそ、嵩が千尋にかけた「生きて帰ってこい」という一言が、何よりも切実に響いた。
■放送情報
2025年度前期 NHK連続テレビ小説『あんぱん』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00〜8:15放送/毎週月曜〜金曜12:45〜13:00再放送
BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送/毎週土曜8:15〜9:30再放送
BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:今田美桜、北村匠海、加瀬亮、江口のりこ、河合優実、原菜乃華、細田佳央太、高橋文哉、中沢元紀、大森元貴、二宮和也、戸田菜穂、浅田美代子、吉田鋼太郎、竹野内豊、妻夫木聡、阿部サダヲ、松嶋菜々子
音楽:井筒昭雄
主題歌:RADWIMPS「賜物」
語り:林田理沙アナウンサー
制作統括:倉崎憲
プロデューサー:中村周祐、舩田遼介、川口俊介
演出:柳川強、橋爪紳一朗、野口雄大、佐原裕貴、尾崎達哉
写真提供=NHK