『いつか、ヒーロー』に込められた脚本家・林宏司の“願い” 泉澤祐希に胸を締め付けられる

 そこで登場したのが、赤山誠司(桐谷健太)だ。「水が冷たいなら、あっためるしかねーじゃねーかよ。それができないなら、その水が悪い。お前は何も悪くない。何も悪くねーよ」と言い、野々村に生きる希望を思い出させる。そして、「人生はな、死ぬまで敗者復活戦なんだよ。負けて、負けて、負けまくって、それでも立ち続けるんだよ」と訴えかけたのだ。

 この場面は、脚本家・林宏司の願いが大きく反映されていたように思う。林が視聴者に伝えたいメッセージを、桐谷が熱い演技で代弁をする。「台本は脚本家から役者へのラブレター」なんて言葉をよく耳にするが、『いつか、ヒーロー』を観ていると「たしかに、そうだな」と思わされる。

「迷惑かけた? 迷惑の掛け合いなんだよ。生きるってことは。役立たず? 役に立つとか立たねえとか、そんなもん誰に決められんだよ。人間の価値は、そんなところにねえ。人間舐めんな!」

 この台詞に、勇気づけられた人も多いのではないだろうか。人生、何があるか分からない。消えてしまいたいくらいにしんどいことがあったとしても、リングに立ち続けていれば、いつか本当の意味での勝者になれる日が来るかもしれない。一度、敗者になったらずっと敗者のまま……なんてことはないのだから。だから、わたしたちは生きて、生きて、生きて、生き抜いて、最後に「生きててよかった」と思えるように踏ん張っていかなければならないのだ。

 また、第2話では東都テレビの敏腕政治記者・西郡十和子(板谷由夏)と、赤山の関係性が垣間見えるシーンもあった。西郡たちが登場する場面は、いつもどこか異物感があったのだが、これから繋がっていくことになるのだろう。赤山を見つけた西郡が、「悪魔が戻ってきた」とポツリつぶやいていたのが、かなり気になるところである。そして、氷室は野々村や渋谷たちの情報を、どこに共有しているのだろう。年齢的に、赤山を意識不明にしたのは氷室ではないのは分かっている。ただ、赤山に対して何かしらの恨みを持っている(もしくは、誰かに操られている)のは間違いなさそうだ。

いつか、ヒーロー

桐谷健太が主演を務めるオリジナルドラマ。『コード・ブルー –ドクターヘリ緊急救命-』などの林宏司が脚本を担当。金もなければ仕事もない元児童養護施設職員のアラフィフ男・赤山が、夢を失くしたかつての教え子たちとともに、腐った巨大権力相手に痛快な復讐劇を繰り広げる。

■放送情報
『いつか、ヒーロー』
ABCテレビ・テレビ朝日系にて、毎週日曜22:15〜放送
TVer、ABEMAにて、地上波放送終了後見逃し配信
U-NEXTにて全話配信
出演:桐谷健太、宮世琉弥、長濱ねる、泉澤祐希、曽田陵介、星乃夢奈、でんでん、小関裕太、駒木根葵汰、板谷由夏、北村有起哉
脚本:林宏司
監督:アベラヒデノブ、星野和成、松本喜代美、松浦健志
チーフプロデューサー:南雄大(ABCテレビ)
プロデューサー:小森千裕(ABCテレビ)、比屋根り子(ABCテレビ)、松野千鶴子(アズバーズ)、増田玲介(アズバーズ)
主題歌:「HERO」石崎ひゅーい(EPIC Records Japan)
制作協力:アズバーズ
制作著作:ABCテレビ
©︎ABCテレビ
公式サイト:https://www.asahi.co.jp/itsukahero/
公式X(旧Twitter):@abcdrama_hero
公式Instagram:@abcdrama_hero
公式LINE:@abc_drama

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