『海に眠るダイヤモンド』を支えた杉咲花の功績 控えめでありながら存在感を放つ芝居力
本作がここまで多くの視聴者の興味を惹き続けてこれたのは、物語そのものももちろんだが、やはり俳優陣の演技に対するものが大きいのではないかと思う。杉咲の演技は朝子の心の内のすべてをストレートに発することなく、つねに含みを持たせている。だから私たちは彼女の言葉や一挙一動が気にかかる。つまりそうして、目が離せなくなっているわけだ。朝子のキャラクターに杉咲が歩み寄り、深く理解し、感情表現の大小といったバランスを丁寧に取っているのだろう。
本作の主人公は鉄平/玲央だが、登場人物の一人ひとりに「物語」がある。劇中で描かれるのはそれぞれにとっての“現在”だが、その前には“過去”があり、その先には“未来”がある。やがて朝子の“未来”は、いづみ(宮本信子)の“現在”に接続することとなる。
最終回で私たちは、朝子といづみとを繋ぐ一本の線(=物語)に触れることになるのだろう。そこには大きく激しい時間の流れがある。昭和の端島で生きていた朝子は、どのようにして令和の東京で生きるいづみへとなったのか。いまのところまだ、私はいち視聴者として両者をうまく結びつけられないでいる。杉咲が表現しなければならないのは、この大いなる変化だろう。
2時間スペシャルとはいえ、時間はかぎられている。朝子の人生をいづみの人生へとどう繋げてみせるのか。杉咲花の控えめだが深みのあるパフォーマンスの質感は、その繊細さを保ったまま、大胆に変わってくるかもしれない。
■放送情報
日曜劇場『海に眠るダイヤモンド』最終回2時間SP
TBS系にて、12月22日(日)21:00~22:50放送
※56分拡大
出演:神木隆之介、斎藤工、杉咲花、池田エライザ、清水尋也、中嶋朋子、山本未來、さだまさし、國村隼、土屋太鳳、沢村一樹、宮本信子、尾美としのり、美保純、酒向芳、宮崎吐夢、内藤秀一郎、西垣匠、豆原一成(JO1)、片岡凜
脚本:野木亜紀子
演出:塚原あゆ子、福田亮介、林啓史、府川亮介
プロデュース :新井順子、松本明子
スーパーバイザー:那須田淳、岡崎吉弘
音楽:佐藤直紀
編成:中井芳彦、後藤大希
製作:TBSスパークル、TBS
制作協力:NBC長崎放送
©TBSスパークル/TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/umininemuru_diamond_tbs/
公式X(旧Twitter):@umininemuru_tbs
公式Instagram:umininemuru_tbs
公式TikTok:@umininemuru_tbs