『ライオンの隠れ家』尾野真千子の“主役”回に “会いたい”からのラストシーンの衝撃

 ライオン(佐藤大空)の母親――愛生(尾野真千子)は生きている。前回のエピソードの終盤で、その希望的な可能性が洸人(柳楽優弥)のなかで確信へと変わり、同時に視聴者に対しては彼女の姿をもってそれが明示された『ライオンの隠れ家』(TBS系)。

 11月8日に放送された第5話は、この“愛生は生きていた”という前提のもと、これまでのような小森家と山梨県という距離を隔てたパート分けではなく、“洸人たち3人の物語”と“愛生の物語”の併行というかたちで綴られていく。

 新宿のキャバクラで働いていた愛生の姿を隠し撮りした天音(尾崎匠海)。すぐさま工藤(桜井ユキ)にそれを報告し、愛生が生きているという内容のウェブ記事が掲載される。それを見た洸人は工藤に連絡をとるのだが、かえって工藤から事件への関与を詮索されてしまう。一方、X(岡山天音)の指示でキャバクラ店から逃げ出した愛生は、その際に財布を奪ったことで窃盗犯として警察に追われることとなり、そこにウェブ記事を見て山梨からやってきた高田(柿沢勇人)も加わることとなる。

 前回のエピソードの序盤、Xのパソコンに届いていた複数の不穏なメール。そこに記されていた内容を改めてチェックしてみると、なんらかのかたちで追い詰められた人たちが“自分自身を消してほしい”とXに依頼しているのである。今回、愛生とXのやり取りのなかで「計画」「契約」という言葉が登場する以上、愛生も同様にXに“自分を消す”よう依頼したのだと推察することができる。その理由についてははっきりとは明かされていないが、おおよそ夫・祥吾(向井理)によるDVと息子・愁人(=ライオン)への虐待から逃れるためなのだろう。

 加えて、なぜ愛生は自分ひとりを消すことを選び、愁人を小森家に託すことになったのか。それは回想シーンで描かれた、前回のエピソードにも登場した2015年の夏の小森家でのできごと――結婚を控えた愛生が久々に小森家を訪れ、母親である恵美(坂井真紀)と再会する一連から見えてくる。

「なにかあったら遠慮なく頼っていい」

 そういえば、愛生は両親の死を知っていたのだろうか。いずれにせよ、愁人だけは頼れる家族のもと、すなわち“安全なプライド”に託すという親心のあらわれだ。

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