『わたしの宝物』冬月との再会で困惑する美羽 静かに涙する深澤辰哉に涙腺が刺激される
しかしそれにしても世間は狭く、“托卵”の秘密を脅かすような包囲網が形成されつつある。冬月の同僚・莉紗(さとうほなみ)は宏樹と商談し、冬月の打ち合わせ相手は美羽の親友・真琴(恒松祐里)だった。美羽と冒頭のやり取りをした真琴は続けて言う。「新しく大切なものができたんだから、一度失くしたものにもちゃんと意味があるんですよ。だから感謝を込めてさよならしちゃいます」。この言葉に突き動かされた美羽は冬月としっかりと対峙し、自分の口で別れを告げることを決めた。
「子どもを、今の家庭を大切にしたい」と切り出されてもなお、「夏野が幸せならいいんだ(中略)夏野と出会えたこと、ほんとに神様がくれたプレゼントだって思った」と言って、お礼を伝える冬月のどこまでも嘘のない言葉が切ない。
どんな局面でも自分の想いはしっかり伝えながらも、全くそれが押し付けがましさにはならない冬月ならではのソフトさやマイルドさは、演じる深澤辰哉自身にも共通しているのだろう。冬月が美羽に背を向けて泣き顔を見せないように静かに涙する姿には、思わずこちらまで涙腺を刺激されてしまった。『春になったら』(カンテレ・フジテレビ系)で深澤が演じた岸くんも、相手ファーストで全く押し付けがましさがなく、見返りを求めるような節もなかった。だからこそ本作のようなタブーに斬り込む作品において、深澤扮する冬月がいることでピュアさが担保され、スキャンダラスな側面ばかりがフィーチャーされることがなくなる重要な役割を担っているのだろう。
さて、2人のさようならの抱擁を目撃していたのが真琴で、いよいよ美羽に“終わりの始まり”が到来するようだ。かねてより宏樹のことを“推し”と呼んでいた真琴に、いくら親友と言えど美羽は彼のモラハラについて打ち明けていなかっただろう。そこを知らない真琴からすれば、ただただ一方的に美羽のわがままさや傲慢さによる不義理だと思ってしまうに違いない。予告編によると、どうやら真琴が関係各所を引っ掻き回していくようで、演じる恒松祐里と美羽役の松本若菜の怪演の応酬にも期待が高まる。また異なる色味を帯び始めた本作を、ヒリヒリした想いを抱えながら見守りたい。
■放送情報
木曜劇場『わたしの宝物』
フジテレビ系にて、毎週木曜22:00~22:54放送
出演:松本若菜、田中圭、深澤辰哉、さとうほなみ、恒松祐里、多岐川裕美、北村一輝
脚本:市川貴幸
主題歌:野田愛実「明日」(avex trax)
演出:三橋利行(FILM)
プロデュース:三竿玲子
制作・著作:フジテレビ
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