『ライオンの隠れ家』は今期イチの“考察ドラマ”に 謎の人物“X”は敵か、味方か?

 柳楽優弥主演のTBS金曜ドラマ『ライオンの隠れ家』は、家族や兄弟の愛の変化と絆を描く温かいヒューマンドラマと、大きな事件がうごめくミステリーが混在した、今期一番の「考察ドラマ」といっても過言ではないだろう。

※本稿は第3話までのネタバレを含みます

 出演者全員の芝居が巧みで、ほのぼの感とホラー感を出しているところがまた物語を面白くしている。現在、物語のポイントとなっている「ライオン」と名乗る少年(佐藤大空)と彼の両親の関係、そして岡山天音演じる謎の人物「X」は善人か悪人なのか? その正体を考察してみたい。

ライオン=橘愛生(尾野真千子)の息子と判明

 改めて相関図をおさらいすると、浦尾市役所福祉課勤務する真面目で優しすぎる青年・小森洸人(柳楽優弥)は、両親を事故で亡くしてから、自閉スペクトラム症の弟・小森美路人(坂東龍汰)と平穏な毎日を過ごしていたが、そんな2人の前に「ライオン」と名乗る少年が突如現れ一緒に暮らすことに。

 少年は、山梨県で建築会社「たちばな都市建設」を経営している橘家の次男・橘祥吾(向井理)の息子・橘愁人だと分かる。母親は洸人が10歳、美路人が6歳の時に一瞬だけ暮らし、家を出て行ったきり行方不明となっていた異母姉・橘愛生(尾野真千子)と判明。そして第3話の最後で、愛生らしき人物が遺体で発見される。

祥吾(向井理)=サイコパス説が濃厚に

 ライオンと両親の関係について気になる点は、第1話の冒頭映像からあった。愛生が愁人の手を取って山中を必死に逃げている映像から始まり、涙ながらに愁人の首に手をかけようとしている。首を締めるという行為なら子供と心中を計ったと考えられるが、別れの愛情表現として顔を触るという行為だと真逆の印象を受ける。愁人の体にはアザがあり、親から虐待を受けていたのか。祥吾は妻子が行方不明となっている心配な状況にも関わらずキャバクラで笑顔を見せるという二面性を持つ男。これまでの流れから見て、家族経営の会社の中で祥吾だけが平社員という扱いをされていることなど、日頃のストレスを愛生や愁人に当たっていて、その生活に耐えきれず2人は逃げ出したという「祥吾サイコパス説」が濃厚だろうか。

 少し話を広げると、愁人は小森兄弟を暖かく見守る寅じい(でんでん)が渡した小学1年生のドリルをスラスラとやっていたことから勉強好きか、頭が良いことが分かる。また、愁人はライオンが好きなのに実際には見たことがなかった。愛されている子供なら動物園ぐらいは連れて行ってもらっていてもいい。おそらく、親が遊ばさせず、勉強をさせていたのではないか。つまり、カゴの中の鳥状態で、そんな環境に耐えられず母子で逃げ出したのでは。ただ、そこまで監視がキツい人なら、帽子が子供の物かどうかが分かりそうだが知らなかった。むしろ愁人はネグレクト状態で、やることがなく勉強が好きになったと考える方が妥当か。愁人のアザに関しては、元々羽を伸ばして自由に生きるタイプの愛生が現在の生活のストレスにより息子に当たったとも考えられる。例え母親からネグレクトを受けていたとしても、その原因は祥吾だということが分かっていたから母親と共に行動した。また愁人はどちらかの連れ子の可能性もあり、歪んだ愛情の結果という見方もできる。

 ただ、あの逃げぶりは完全に追われているようなので、単純な話ではなさそうだ。

祥吾(向井理)がキャバクラで見せた“裏の顔”

 「たちばな都市建設」は山梨のリニア周辺事業を展開しようとしていて、代表は兄の春一で祥吾は平社員。記者の工藤楓(桜井ユキ)と天音悠真(尾崎匠海)は、6股の不倫疑惑の亀ヶ谷議員が、リニアの工事に便乗して裏で派手に地上げをしていることを追求する。祥吾がキャバクラで笑顔を振りまいていた相手が地上げ屋なのだろう。愛生はこの辺りの事件に巻き込まれたか、祥吾の悪行を恐れて逃げたのか。逆に、祥吾が妻子の命を案じ、偽装で行方不明になる計画を企てたとも考えられるが、その線は薄いか。ただ、祥吾の二面性の顔は家族より会社の為なのは間違いなさそうだが、それが家族の為に働くお父さんの営業スマイルの可能性もある。見方によっては、愛生が亡くなったのを知っているから笑顔なのか、逆に母子の安否を知っているから笑顔を見せられるのか。

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