『モンスター』は一人ひとりの怪物性をあらわにする なえなのが守ろうとした本当の自分

 10月21日放送の『モンスター』(カンテレ・フジテレビ系)第2話の題材は著作権侵害、いわゆるパクリである。アイドルグループ「ハッピー☆ラビット」のシホ(なえなの)は、前所属事務所社長で音楽プロデューサーの黒川(山中聡)から歌詞を盗作したと訴えられる。

 先日、筆者はAIによる作曲を体験した。バンドで曲作りに煮詰まって試したところ、サビの歌詞と曲調を指定するだけで見事にそれっぽい音源ができた。出来上がった音源は演奏のクオリティだけ取ったらAIの方が上手で、思わず楽器の処分を考えたほどだ。「自分たちでやらないと意味がないのでは?」というマネージャーの一言で音源はボツになったが、はたして自分たちで作ったといえるかモヤモヤしたのはここだけの話である。

 どこまでが創作でどこからがパクリか? その境界はあいまいだ。AIによる創作物に著作権はないものの、利用者がAIに既存の作品を学習させた場合はグレーとなり権利侵害の可能性が出てくる。第2話はやや入り組んだストーリーだった。ハッピー☆ラビットの所属事務所では、以前、AIによるポスターデザインの盗作疑惑があった。シホはかたくなに盗作を否定する。代理人の亮子(趣里)はシホの経歴に目を付けた。

 AIと人間の違いは何だろう。AIは情報をデータとして取り込むが、人間には感情がある。AIは誤った情報を取り込むことで学習の精度が落ちるのに対して、人間は意図的に嘘をつける。歌詞の盗作に関する主張が平行線をたどると思われたところで、コンビニ店員への態度が炎上したことをきっかけに、ドラマはシホの過去をめぐって急展開を迎えた。

 シンメントリーで均整の取れた顔立ちを「AIのようである」と形容するように“理想の顔”の追求において、整形とAIによる描画が接近するのは興味深い。第2話の週タイトルは「嘘と選択」だった。シホが選んだのは整形によって手にした新しい人生で、そのために過去を偽ることにした。その結果どうなったかと言えば、歌詞をパクったと認めなくてはならない。本当はパクっていなくても。

関連記事