『踊る大捜査線 THE MOVIE 2』に刻印された激動の平成 警察だから描けたサラリーマン社会

 本作の被疑者は複数存在し、お台場の群衆の中に紛れ込んでいるのだが、一番大きな敵として描かれているのが、会社役員の殺人をおこなった犯行グループだ。彼らの正体は不明で、警察を挑発するために電話をかけてくる犯人も、入れ替わっていく。やがて警察は、彼らの正体は会社をリストラされたサラリーマンだと分析するのだが、お台場の会社でリストラされた社員は2000人以上いることがわかり、なかなか犯人を特定できない。

 『踊る』は、警視庁のことを「本店」、所轄署のことを「支店」と呼び、警察内部の組織構造をサラリーマンの会社組織と同じように描いたことが画期的だった。しかし、今振り返ると、そこで描かれている会社組織のあり方は年功序列、終身雇用が前提となっていた昭和のサラリーマン社会そのものだった。現実(平成)のサラリーマン社会は、バブル崩壊と新自由主義の浸透によって、会社組織に所属する正社員と、非正規雇用の派遣社員やフリーターという新たな階級構造が生まれ、日本型組織の在り方が変わっていく激動の時代だった。そのため万人が共有できる会社組織を描いたテレビドラマを作ることが年々難しくなっていた時期で、逆に言うと『踊る』のような刑事ドラマを経由することでしか、昔ながらの会社組織は描けなくなっていた。

 だからこそ、『踊る』シリーズに登場する悪役は、昭和の会社組織の枠組から大きく外れた、得体の知れない匿名の集団が多い。その方向性が決定的になったのが『踊る2』だったと言えるだろう。

 平成という時代を駆け抜けた『踊る』には、昭和の縦型サラリーマン社会が、じわじわと機能不全に陥っていく中で、新しい組織のあり様を模索する姿が刻印されている。

 労働環境が目まぐるしく変わる令和の現在、『踊る2』が描く警察(会社)組織は私たちの目にどう映るのか? 平成という時代の記憶が遠くなりつつある今こそ、観返す意味のある映画だろう。

■放送情報
映画『踊る大捜査線 THE MOVIE2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』
フジテレビ系『土曜プレミアム』にて、10月5日(土) 21:00~23:55放送
出演者:織田裕二、柳葉敏郎、深津絵里、水野美紀、ユースケ・サンタマリア、いかりや長介ほか
監督:本広克行
脚本:君塚良一
プロデューサー:亀山千広
製作:フジテレビジョン アイ・エヌ・ピー
©2003フジテレビジョン アイ・エヌ・ピー

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