濱田岳が『新宿野戦病院』で担う役割 橋本愛との“映画マウント合戦”も見どころに

 金もうけ主義の美容皮膚科医・高峰享(仲野太賀)と、軍医経験を持つ女医のヨウコ・ニシ・フリーマン(小池栄子)が本作の主人公で、クセの強い登場人物たちの中でもこのふたりはとくに個性が際立っている。作品はふたりを中心に展開していくものだから、享とヨウコのノリやテンションに全員がつられていては、収拾がつかないことにだってなりかねない。そもそも、実際の歌舞伎町だってなかなかにカオスなのだ。やはり整理する人物が必要になってくる。これを担っているのが警察官の岡本なのではないだろうか。

 とはいえ先述した内容からも分かるように、岡本は完璧な警察官だとはいえない。少なくとも、一般的な警察官のイメージとは少し違う。濱田は快活さなどとは程遠い肩の力の抜けた警察官像を立ち上げ、本作固有の世界観を大切にしつつ、距離を取りながら見守る役どころを担っているように思う。非常に重要なポジションだ。現実離れした役どころはほかの者たちに任せ、彼自身は現実にいそうでいない、いや、いなさそうでいる、そんなキャラクターを体現している。享やヨウコならば多少はやり過ぎたパフォーマンスも許されるのだろうが、岡本は個性派キャラクターたちの存在によって左右される作品の印象を修正するような存在なのだ。

 こういった役割とは別にいま注目なのが、橋本愛が演じる南舞との掛け合い。映画ファンである岡本は、これまでたびたび南に対して映画知識のマウントを取ろうとしてきた。しかし流れとしては、それを受けた南がさらにコアな知識を披露するというもの。セリフの妙が感じられるクドカン脚本の巧みなポイントであり、登場人物同士のやり取りとしてどのように成立させられるかが肝心だ。演じ手のセリフの扱い方によっては、言葉たちが特別な意味合いを持ってしまうし、ともするとスベってしまいかねないものでもある。いまのところ私たち視聴者の多くが魅せられているのではないだろうか。これは濱田と橋本のやり取りの巧さにある。『新宿野戦病院』全体における濱田の役割とはまた別の、彼の俳優としての力量がここに表れている。

■放送情報
『新宿野戦病院』
フジテレビ系にて、毎週水曜 22:00~22:54放送
出演:小池栄子、仲野太賀、橋本愛、平岩紙、岡部たかし、馬場徹、塚地武雅(ドランクドラゴン)、中井千聖、石川萌香、萩原護、伊東蒼、趙珉和、濱田岳、余貴美子、ともさかりえ、臼田あさ美、高畑淳子、生瀬勝久、柄本明ほか
脚本:宮藤官九郎
プロデュース:野田悠介
演出:河毛俊作、澤田鎌作、清矢明子
制作:フジテレビ ドラマ・映画制作部
制作著作:フジテレビジョン
©︎フジテレビ
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