『ツイスターズ』北米No.1で映画市場に“竜巻”起こす 予想を超えるヒットはなぜ起きた?

『ツイスターズ』予想超えるヒットで北米No.1

 夏の北米映画市場に旋風……いや、“竜巻”の上陸だ。7月19~21日の週末ランキングは、人類と巨大竜巻の激突を描いたアクション大作『ツイスターズ』が初登場No.1。週末3日間の興行収入は8050万ドル、事前予想の160%というスタートダッシュを決めた。

 劇場公開前、本作は4000万~5000万ドル程度の初動とみられていたが、蓋を開ければ誰も予想しない大ヒット。『インサイド・ヘッド2』と『デューン 砂の惑星PART2』に続き、今年第3位のオープニング成績となった。自然災害を描いたディザスター映画としては、『デイ・アフター・トゥモロー』(2004年)を超えて北米史上最高のスタートとなっている。

 奇しくも1年前は、『バービー』と『オッペンハイマー』の同日公開で「バーベンハイマー現象」が北米の映画館を席巻していた。『オッペンハイマー』の北米オープニング成績が8245万ドルなので、『ツイスターズ』はまさしく『オッペンハイマー』と同等の滑り出しである。

 本作は1996年製作『ツイスター』の続編だが、ストーリー&キャラクターを一新。恐るべき巨大竜巻の数々がオクラホマ州に襲いかかる。原案は『トップガン マーヴェリック』(2022年)のジョセフ・コシンスキー、脚本は『レヴェナント 蘇えりし者』(2015年)のマーク・L・スミスが担当し、監督を『ミナリ』(2020年)のリー・アイザック・チョンという精鋭たちが務めた。

 なぜこの作品が予想以上の成績を打ち立てたのか、現地ではいくつかの理由が分析されている。ひとつは、当時大ヒットした前作『ツイスター』の懐かしさを映画ファンの間に喚起しつつ、マス向けのプロモーションではオリジナル作品のように見せた絶妙なバランス感覚。また、出演者にはハリウッドの次代を担うフレッシュなニュースターが集結した。

 主人公のケイト役は、人気ドラマシリーズ『ノーマル・ピープル』(2020年)のデイジー・エドガー=ジョーンズ。共演には『トップガン マーヴェリック』や『恋するプリテンダー』とヒット作の続くグレン・パウエル、『イン・ザ・ハイツ』(2021年)や『トランスフォーマー/ビースト覚醒』(2023年)のアンソニー・ラモス、『NOPE/ノープ』(2022年)のブランドン・ペレア、『ロキ』(2021年)のサッシャ・レイン、そして新スーパーマン役に起用されたデヴィッド・コレンスウェットと、「よくぞここまで揃えた」という顔ぶれだ。

 そして大きな要因は、現実に竜巻の影響を受けやすいアメリカ中南部の観客に注目されたことだ。ハリウッドがあまり強く意識しない傾向にある地域ではあるが、本作では劇中の舞台となったオクラホマ州で異例の大ヒットとなったほか、テキサス州のダラス、ヒューストン、サンアントニオなどで優れた成績を示した。

 また、7月13日に発生したドナルド・トランプ銃撃事件の影響で人々が娯楽を強く求めたことや、異常気象についての映画でありながら、本編と宣伝のどちらも気候変動に言及しないことで政治的イシューから距離を取ったことも成功の一因とみられる。企業とのタイアップ、カントリー志向のサウンドトラックもCMやSNSでの拡散につながった。

 一連の戦略によって、『ツイスターズ』は老若男女を問わず、幅広い客層を映画館に招き入れることに成功した。Rotten Tomatoesでは批評家スコアも78%と悪くないが、観客スコア92%と上々の成績。映画館の出口調査に基づくCinemaScoreでは「A-」評価を獲得している。

 海外興収は4270万ドルで、世界累計興収は1億2320万ドル。製作費は1億5500万ドルなので、黒字化にはもう少し時間を要するとみられるが、口コミ効果しだいではさらなる善戦を見せそうだ。日本公開は8月1日で、『インサイド・ヘッド2』と激突する。

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