吉高由里子の“己を曲げない強さ”が『光る君へ』の根幹に まひろと道長の物語が再び始まる

 この、「己を曲げて誰かと寄り添うことがいとおしいということ」という言葉について考える。例えば、まひろが道長をいとおしいと思うあまり当初は否定したにも関わらず「妾でもいいから傍にいたい」と思ったこと。それは「己を曲げて寄り添」おうとしたと言えるだろう。

 でも結局はその道を選ばず、彼女は「己を曲げなかった」。でもそれは同時に「己の心に従わなかった」ことをその後10年後悔させるものでもあった。夫・宣孝に対する思いは、道長に対する思いとは少し違うものの、まひろの表情の変化を見るにつけ、「いとおしいと思う気持ち」自体は存在しているのだろう。とはいえ宣孝は「ありのままのお前をまるごと引き受ける」と言ったではないか。「不実な女」であるまひろを。とはいえ「あいこである」はずの「不実」さを一方的に攻め立てるわけにもいかずと、己が己でなくなる恋や愛というものの複雑さについて考えあぐねているところで、思わぬ石山寺での道長との再会である。

 鳥のように自由に生きてきたまひろには、結婚しようと何をしようと、己を曲げずに生き抜いてほしい。ちやはや、いとの言葉が、千年変わらない、幸せな結婚生活のための的確なアドバイスだからといって、まひろには変わらないでいてほしい。だから私は、終わったはずのまひろと道長、2人の物語が、また始まろうとしていることが楽しみでならないのである。

■放送情報
『光る君へ』
NHK総合にて、毎週日曜20:00〜放送/ 翌週土曜13:05〜再放送
NHK BS・BSP4Kにて、毎週日曜18:00〜放送
NHK BSP4Kにて、毎週日曜12:15〜放送
出演:吉高由里子、柄本佑、黒木華、井浦新、高杉真宙、吉田羊、高畑充希、町田啓太、玉置玲央、板谷由夏、ファーストサマーウイカ、高杉真宙、秋山竜次、三浦翔平、渡辺大知、本郷奏多、ユースケ・サンタマリア、佐々木蔵之介、岸谷五朗、段田安則
作:大石静
音楽:冬野ユミ
語り:伊東敏恵アナウンサー
制作統括:内田ゆき、松園武大
プロデューサー:大越大士、高橋優香子
広報プロデューサー:川口俊介
演出:中島由貴、佐々木善春、中泉慧、黛りんたろうほか
写真提供=NHK

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