『【推しの子】』原作改変問題を扱う切り口の鋭さ 原作者・鮫島アビ子が起こした“波乱”

 『東京ブレイド編』の最大の見どころは、あかねとかなによる凝縮された演技対決だ。かながキャラクター「ツルギ」のコツを着実に掴んでいく一方で、あかねは原作と脚本のキャラクター設定の違いに戸惑い、「鞘姫」の役作りに苦心する姿が描かれる。

 大輝の卓越した実力に触発され、かなの演技には目を見張るものがある。かなといえば、第1期ではアイドルとしての苦悩や人気子役だったからこその業界の難しさを語る存在として挫折も描かれていた。そんなかなの俳優としての側面をアニメで観られるだけでも、第2期を観る価値があるだろう。

 かなの才能を認めながらも、ライバル心を激しく燃やすあかね。全体を冷静に観察していたアクアは、あかねがかなに演技で大差をつけられて敗北すると予言した。

 アクアの予言が当たったかのように、あかねは、自身が演じる鞘姫のキャラクター設定に苦戦を強いられる。原作とは異なる解釈に戸惑い、得意の感情移入ができずにいた彼女は、アクアのすすめで演出の金田一(CV:志村知幸)と脚本のGOA(CV:小野大輔)に助言を求めるのだった。

 GOAの2時間の舞台では「盛り上げるところを定めて取捨選択する必要がある」との説明によって、作品の中に原作との齟齬という慎重に扱うべきデリケートな問題も浮上する。

 原作からの改変を巡る議論は、現在火傷しかねないホットな話題でもあるが、やはりこの問題に切り込んでいけるのも業界の裏側を描く『【推しの子】』だからこそなのではないか。GOAの「そういう汚れ役(原作ファンからの批判)も僕の仕事の内だと思ってる」という言葉に、考えさせられるものがあった。第1話の最後には、「東京ブレイド」の原作者・鮫島アビ子(CV:佐倉綾音)がやってきて、脚本の大幅な修正を求める声を上げる。この先、本作がこの問題をどうアニメで描いていくのかも気になるところだ。

【推しの子】第2期ノンクレジットオープニング|GEMN「ファタール」

 ちなみに、第2期からのOP「ファタール」の映像の最後では、すでに亡くなっているはずのアイが息子の舞台を観劇するカットがあり、ネット上で「アイが見守ってる!」と話題に。舞台に立つ演者たち、そしてその背後で奔走するスタッフたち。彼らの熱意と葛藤が交錯する中、アイの存在が静かに物語を見守っているかのようだ。

 これから『東京ブレイド』の舞台は、どのような展開を見せるのか。アイと共に、私たち視聴者も彼らの成長と苦悩を見守っていくことになるだろう。

■放送情報
『【推しの子】』
TOKYO MXほかにて、毎週水曜23:00〜放送
ABEMAにて、毎週水曜23:00〜地上波同時・単独最速配信
原作:赤坂アカ、横槍メンゴ(集英社『週刊ヤングジャンプ』連載)
キャスト:大塚剛央(アクア)、伊駒ゆりえ(ルビー)、潘めぐみ(有馬かな)、石見舞菜香(黒川あかね)、大久保瑠美(MEM ちょ)、内山昂輝(姫川大輝)、前田誠二(鳴嶋メルト)、小林裕介(鴨志田朔夜)、佐倉綾音(鮫島アビ子)、伊藤静(吉祥寺頼子)、鈴村健一(雷田澄彰)、小野大輔(GOA)、志村知幸(金田一敏郎)、高橋李依(アイ)
監督:平牧大輔
助監督:猫富ちゃお、仁科くにやす
シリーズ構成:田中仁
キャラクターデザイン:平山寛菜
サブキャラクターデザイン:澤井駿、渡部里美、横山穂乃花
総作画監督:平山寛菜、渡部里美、横山穂乃花、稲手遥香、監物ケビン雄太
アクションアニメーター:あもーじー
メインアニメーター:早川麻美、水野公彰、室賀彩花
美術監督:宇佐美哲也(スタジオイースター)
美術設定:水本浩太(スタジオイースター)
色彩設計:石黒けい
撮影監督:桒野貴文
編集:坪根健太郎
音楽:伊賀拓郎
音響監督:高寺たけし
音響効果:川田清貴
アニメーション制作:動画工房
©赤坂アカ×横槍メンゴ/集英社・【推しの子】製作委員会
公式サイト:https://ichigoproduction.com/
公式X(旧Twitter):@anime_oshinoko

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