ナチスを官能的に描いた『フィリップ』の新しさ 性愛を利用した復讐がたどり着く運命とは

ナチスを官能的に描く『フィリップ』を紹介

 ナチスを官能的に描写するなんて新しくないですか? 本作はとても新鮮な切り口で描いていると感じました。ポーランド系ユダヤ人がフランス人と偽り復讐していく、それもナチス将校の妻たちを寝取っていく形であることも新しかったですし、反対に国内に残された女性たちの実情も浮かび上がらせていました。街中では軍服に身を包んだ子どもたちが行進し、女たちはやりきれない寂しさを抱えている。本作はポーランド人作家レオポルド・ティルマンドの実体験に基づく自伝的小説をもとに描かれているため、ナチス・ドイツの“一つのリアル”を窺い知ることができます。

 あらすじにもあるように、復讐者としてのユダヤ人・フィリップは知的な美しいドイツ人・リザと愛し合うようになります。そしてそのまま幸せになるのかと思いきや、物語の結末でフィリップは……。最後に導かれた結論をどう捉えるか。作品の真意、そして人を愛することについて考えさせられる一作です。

■公開情報
『フィリップ』
新宿武蔵野館、シネスイッチ銀座、アップリンク吉祥寺ほかにて全国公開中
監督:ミハウ・クフィェチンスキ
脚本:ミハウ・クフィェチンスキ、ミハル・マテキエヴィチ
出演:エリック・クルム・ジュニア、ヴィクトール・ムーテレ、カロリーネ・ハルティヒ、ゾーイ・シュトラウプ、ジョゼフ・アルタムーラ、トム・ファン・ケセル、ガブリエル・ラープ、ロベルト・ヴィエツキーヴィッチ、サンドラ・ドルジマルスカ、ハンナ・スレジンスカ、マテウシュ・ジェジニチャク、フィリップ・ギンシュ、ニコラス・プシュゴダ
撮影:ミハル・ソボチンスキ
美術:カタジーナ・ソバンスカ、マルセル・スラヴィンスキ
衣装:マグダレナ・ビェドジツカ、ユスティナ・ストラーズ
メイクアップ:ダリウス・クリシャク
音楽:ロボット・コック
プロデューサー:ポーランド・テレビSA
配給:彩プロ
原題:Filip/2022/ポーランド/ポーランド語、ドイツ語、フランス語、イディッシュ語/1: 2/124分/字幕翻訳:岡田壮平/R15+
©TELEWIZJA POLSKA S.A. AKSON STUDIO SP. Z.O.O. 2022
公式サイト:https://filip.ayapro.ne.jp/

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