特撮→BLドラマは新たなスター街道に 若手俳優の“トリセツ”を抽出するための試金石

外と内の重層的な演技力が試される場所

 当初1年間限定での放送枠だったドラマシャワーは、2023年以降も継続され、現在までに12作品を放送している。その内、主演俳優の半数以上が、特撮ドラマ出身者ないしは恋愛リアリティ番組出演者で占められている。同枠が、若手俳優のキャリアを底上げするスタンダードなコースとなっていることは明らか。MBSの別放送枠「ドラマ特区」に目を向けてみても、『君となら恋をしてみても』(2023年)の日向亘は、前田と同じ『仮面ライダーリバイス』出演で勢いをつけてBLドラマ主演につなげている。はたまた『仮面ライダーギーツ』(2022〜2023年/テレビ朝日系)では演技未経験だった佐藤瑠雅が、現在放送中の『彼のいる生活』(TOKYO MX)で早くもケレン味を感じる快演を発揮。BLドラマという登竜門をくぐった先に飛躍が確約されているわけではないけれど、まだ演技経験がすくない若手が実力を伸ばすための場所になることは間違いない。

 『ホームレス中学生』(2008年)などの古厩智之監督が演出した『飴色パラドックス』(2022〜2023年/MBS)では、W主演の「M!LK」山中柔太朗と「FANTASTICS」木村慧人が青春映画の名匠の手ほどきで、持続力ある瑞々しい好演をものにしている。特に木村は同作をうまく呼び水として、現在放送中の『好きなオトコと別れたい』(テレビ東京)では、ラブコメの王道キャラクターに挑戦している。木村と同じ「FANTASTICS」所属ボーカル・八木勇征の成功例を考えたら、鬼に金棒だし、Jr.EXILE世代のLDH俳優とBLドラマの相性はかなりいい。

 ラブコメ作品でしっかりトリセツを提示した前田拳太郎だって、2022年から「劇団EXILE」所属俳優。『君には届かない。』(2023年/TBS系)での新鮮な黒髪の佇まいは、BL俳優として抜きん出ていた。

 「劇団EXILE」からは最年少メンバーの櫻井佑樹が、『4月の東京は…』(2023年/MBS)で初主演。同作で公式ライターを担当した経験からいうと、実際に目の前にした櫻井の相貌は、マンガの世界からそのまま飛び出してきたようで、その彼が相手役の髙松アロハと取材現場でおどける距離の近さには、本編同様の魅力があった。つまり、作品外でもそうした“尊さ”をいかに醸すのか。もっというと、作品外の尊さを今度はどうやって作品内でのコンビ愛として結実するのか。その意味で、BLドラマに主演する若手俳優が役作りの一貫として作品外での関係性を深める駒木根主演の『25時、赤坂で』(テレビ東京系)は、いかにも象徴的な作品。BLドラマという登竜門は、この外と内の重層的な演技力が試される場所なのだと僕は考えている。

■放送情報
『25時、赤坂で』
テレビ東京ほかにて、毎週木曜24:30〜25:00放送
出演:駒木根葵汰、新原泰佑、宇佐卓真、南雲奨馬、福津健創、今川宇宙、篠原悠伸、橋本淳、片山萌美
原作:夏野寛子『25時、赤坂で』(祥伝社 on BLUE COMICS)
監督:堀江貴大、川崎僚
脚本:青塚美穂、阿相クミコ
©「25時、赤坂で」製作委員会
公式サイト:https://www.tv-tokyo.co.jp/25jiakasakade/
公式X(Twitter):@25ji_akasakade
公式Instagram:@25ji_akasakade

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