“劇場版青山剛昌”? 『名探偵コナン 100万ドルの五稜星』は連載開始30年に相応しい一作

 そして本作は『名探偵コナン』の作者である青山剛昌の別作品である『まじっく快斗』『YAIBA』からのキャラクターが総登場。『まじっく快斗』からは怪盗キッド=黒羽快斗、そして『名探偵コナン』でもお馴染みとなった中森銀三はもちろん、その娘であり快斗の幼なじみである中森青子が劇場版『名探偵コナン』シリーズに初登場。アニメ『名探偵コナン』シリーズへの登場も僅か2度、それも『名探偵コナン』キャラクターとの接点はなかったため、実質的な初登場と言っても良いだろう。『YAIBA』からは沖田総司、そして鬼丸猛が登場。特に終盤の五稜郭での敵対組織とのバトルシーンでの活躍が印象的だ。これほどまでに『まじっく快斗』『YAIBA』からのゲストキャラが登場したのはこれが初めてであり、“劇場版青山剛昌”のような空気さえ感じる作品であった。

 そんな本作における最大のサプライズはエンドロール後に明らかとなった工藤優作と黒羽盗一、ひいてはコナン=新一とキッド=快斗の真実の関係性だろう。優作と盗一は双子であり、その息子同士である新一と快斗は従兄弟ということがここで示されたのだ。黒羽盗一はキッドの父親であり、初代怪盗キッド。とある組織に殺害されたとされ、快斗がキッドとしてビッグジュエルを狙うのはその組織への接触と仇討ちが目的。そんな中で優作と盗一が双子であること、そして現在も盗一が生きていることが示された本作は『名探偵コナン』『まじっく快斗』両作品のストーリーの根幹を揺るがす、ターニングポイントとなる作品となった。もっとも『名探偵コナン』シリーズにおいて、原作やアニメシリーズの“本筋”に係る重要な設定が先立って示されたのはこれが初めてではない。劇場版シリーズ18作目の『異次元の狙撃手』でも今回同様、原作にまつわる大きな設定が暗示され、その後の展開に大きく関わっている。今回示された設定が、今後の『名探偵コナン』『まじっく快斗』シリーズの展開にどうフィードバックされるのか、今後も目が離せない。

 前述した“劇場版 青山剛昌”的スターシステムの大胆な盛り込み、そして新一とキッドの設定の開示も含め、原作やアニメシリーズを追いかけてきたディープなファンであれば一層楽しめるのが本作最大のポイントだ。原作コミックが連載開始30年という節目となる年の作品となった『100万ドルの五稜星』が例年以上にコアファンに向けた作品となったのは、青山剛昌からファンへのご褒美だったのかもしれない。

■公開情報
『名探偵コナン 100万ドルの五稜星(みちしるべ)』
全国公開中
原作:青山剛昌
監督:永岡智佳
脚本:大倉崇裕
音楽:菅野祐悟
キャスト:高山みなみ(江戸川コナン)、山崎和佳奈(毛利蘭)、小山力也(毛利小五郎)、山口勝平(怪盗キッド)、堀川りょう(服部平次)
スペシャルゲスト:大泉洋
主題歌:aiko「相思相愛」(ポニーキャニオン)
アニメーション制作:トムス・エンタテインメント
製作:小学館、読売テレビ、日本テレビ、ShoPro、東宝、トムス・エンタテインメント
配給:東宝
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